2009年2月6日(金)

隠蔽されていた「北の核保有」

 米中央情報局(CIA)の次期長官に指名されたパネッタ氏が昨日、上院情報特別委員会の人事聴聞会に提出した書面資料の中で「北朝鮮が2006年に核兵器を爆発させたことをわれわれは知っている」と述べ、北朝鮮の核兵器爆発実験を公に認めたようだ。

 北朝鮮の核実験(2006年10月9日)に関する当時のブッシュ政権の見解は「不発に終わり、失敗に終わった」というもので、従って「核実験は核兵器のレベルに達していない」というものであった。日本のマスコミ報道も、こうした米国の見解に追随していた。日本の一部専門家の中には「核兵器ではなく、核装置の爆破実験だった」と主張する人もいたほどだ。

 ところが、米国の見解は、大統領選挙期間中に「北朝鮮は核を8発保有している」と発言していたオバマ大統領が当選した昨年11月頃から変わってきた。

 米国家情報会議(NIC)は昨年11月に発表した「グローバル・トレンド2025」の報告書の中で北朝鮮を「核兵器国家」と記述。また、国防総省傘下の統合戦力軍(USJFCOM)も昨年11月25日に作成した報告書「2008年合同作戦環境評価報告書」の中で「アジア大陸沿岸にはすでに5か国の書く保有国がある」とし、中国、ロシア、インド、パキスタンと並んで北朝鮮を「核兵器保有国」と言及した。

 さらに、ゲーツ国務長官が任命した米国防省「核兵器管理レビュータスクフォース」(議長:ジェームス・シュレシンジャー元国防長官)も最近発行した報告書「Report of the Secretary of Defense Task Force on DoD Nulear Weapons」で「北朝鮮が複数の核兵器だけでなく、核兵器を運搬できるミサイルシステムもすべて確保している」と指摘していた。終いには、ゲーツ国防長官自身も外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」(09年1−2月号)への寄稿文で「北朝鮮がすでに何個かの核兵器を製造している」と言及せざるを得なかった。

 「不発に終わった」との当時の楽観論は、長崎に投下された核爆弾に使用されたのと同じ量(6kg)のプルトニウムが使われたにもかかわらず、爆発規模は1キロトンと、長崎のそれよりもはるかに小さかったことが挙げられていた。

 しかし、核実験直後に訪朝(06年10月31−11月4日)したヘッカー米国立核研究所名誉所長ら4人の研究者がまとめた報告書には「北朝鮮が実験2時間前に中国に通告したとおり当初4キロトンを目標にしていたなら、1キロトンの出力を得たことは、完全とは言えないが、成功的であったと言える」と結論付けていた。そのうえで、報告書は最後に「北朝鮮は核爆発を統制するため爆発規模を少なくしたようだ」と推測していた。

 ところが、昨年北朝鮮から米国に提出された核計画申告書によると、実際に核実験に使われたプルトニウムの量は6キロでなく実際にはその3分の1の2キロであったことがわかった。北朝鮮の核開発は米国の予想を上回るものであった。

 北朝鮮を「核保有国」として認めたくないとの理由から過小評価や情報の隠蔽が行なわれたものと考えられるが、核に続きテポドンの発射となると、米国としても現実的な脅威をこれ以上、無視、放置できないということなのかもしれない。

 ヒラリー・クリントン国務長官が16日からの日韓中歴訪期間中に北の核とミサイルについてどう言及するのか、俄然注目せざるを得ない。