2011年11月23日(水)

TPPと韓国脅威論

 日本の経済産業省よると米韓FTA発効が日本に与える影響は、2020年までに自動車・家電・機械など対米輸出の機会が1兆5000億円分、関連の国内生産の機会が3兆7000億円分奪われると試算しているようだ。

 特に自動車産業への影響が大きいようで、韓国がASEAN(東南アジア諸国連合)とインドに続き、EU(欧州連合)、米国とのFTAも発効すれば、世界自動車市場の半分に相当する3000万台の市場で競争不利になると言っている。

 このデーターの根拠が何なのか定かではないが、韓国政府系シンクタンク11社の共同分析によっても、韓国の対米輸出増は年平均14億ドルほどと控えめだ。また、EU,米国に続いて仮に中国とFTAが発効され、韓国の輸出が400億ドル増えたとしても、日本のこの地域における輸出減少はせいぜい112億ドル(1兆円)程度と分析しており、日本の試算よりもダメージははるかに低い。

 そもそも日韓はライバルではない。というのも、韓国の貿易が、輸出が伸びれば、伸びるほど、日本の対韓貿易黒字が拡大するという構図になっているからだ。

 日韓の貿易額は800億ドル程度だが、韓国からすれば、06年が234億ドル、07年が290億ドル、そして08年には300億ドルを軽く突破し、327億ドルの貿易赤字を記録している。

 日韓貿易では日本の黒字と韓国の赤字が右肩上がりしているのが現状だ。08年にいたっては、韓国は対中貿易で得た234億ドルの黒字をまるまる対日赤字で帳消しにしている。

 韓国の対日貿易赤字の原因は電子・電気機器・機械類・自動車・造船など日韓の産業構造が似通っていることにある。

 韓国の主力輸出品である半導体、平面ディスプレイ等の生産のための中間財(部品や素材)や資本財(製造機械)などは日本に依存する構造にある。従って、韓国の輸出が伸びれば、伸びるほど、日本が儲かるという計算になる。

 それともう一つ、比較しなければならないのは、日本が脅威に感じている韓国の車の生産台数である。

 韓国の生産台数は世界5位ではあるが、それでも日本の962万台の約半分にも満たない427万台だ。一人当たりのGNI(国民総所得)も日本の半分程度だ。この差は大きい。

 また、安ければ売れるという話ではない。現に韓国の現代自動車「アバンテ」「ソナタ」が2000年に日本に上陸したが、約10年の間に1万5千台しか売れなかった。現代自動車は2009年に撤退したが、その後も大宇自動車が「ラッセティ」「マティス」を日本に輸出したが、これまたたったの1400台しか売れず、さらにあのサムソンもフランスのルノーと提携し、一昨年SUV「QM5」を販売したが、これまた業績不振で撤退を余儀なくされている。

 韓国脅威論からTPP加入を急げというのは今一つ腑に落ちない。