2011年9月22日(木)

李明博政権下の南北非核化協議

 昨日、7月のインドネシアのバリ島での会談以来2度目の南北6か国協議首席会談が行われた。

 今回も1回目同様に双方の主張は平行線を辿り、6か国協議開催に向けた進展は見られなかった。それでも双方とも「有益な対話を行った。6カ国協議再開に向けて努力を続ける」との感想を述べていることから一歩一歩前進していることは間違いない。6か国協議は遅かれ早かれ開かれることになるだろう。

 今回の会談でも無条件再開を求める北朝鮮に対して韓国は@濃縮ウラン活動の即時停止AIAEA(国際原子力機構)監視要員の復帰B核実験・弾道ミサイル発射実験の保留の3点を要求しているが、AのIAEA監視要員の復帰については北朝鮮は6か国協議が再開されれば、受け入れる意向を示している。受け入れを表明している以上、6か国協議再開前にも実現するかもしれない。Bの核・ミサイル発射実験については先の訪露でのメドベージェフ大統領との首脳会談で金正日総書記自らが「6か国協議が再開されればその過程で凍結する用意がある」と表明している。従って、この問題については「6か国協議が開かれている間は実験を留保する」ということで妥協が成立する可能性はある。

 また、6か国協議の早期再開を求める北朝鮮側はこれまで固執していた前提条件をすべて取り下げている。

 米国に強く求めていた米朝間の平和協定議論については「6か国協議が開かれ、非核化の論議が推進すれば、朝鮮半島の平和体制を論議する準備ができている」(ボズワース北朝鮮担当特別代表)との米国の説得を受け入れ、北朝鮮も米朝間の討議に拘らず、「6か国協議の枠内で行う」と、譲歩している。

 もう一つの条件である制裁解除についても米国が「6か国協議復帰だけでは補償は与えない。非核化に向けた措置を取らない限り制裁は緩めない」との立場を変えないことから北朝鮮は「制裁解除なくして6か国協議の場に出ない」との主張を引込めている。

 問題は、ウラン濃縮活動だ。

 韓国及び米国はその停止を6か国協議再開の最優先条件として求めているが、北朝鮮は「6か国協議でウラン濃縮問題を議論することには反対しない」としつつも、6か国協議再開前の停止を拒んでいる。その一方で、昨年12月中旬に訪朝したリチャードソン米ニューメキシコ州知事にIAEA監視要員によるウラン濃縮工場への査察受け入れを表明している。

 北朝鮮は軽水炉の供与をウラン濃縮活動の停止の交換条件とする構えだ。6か国共同声明の第4項に「北朝鮮は原子力の平和利用を有する旨発言した。他の参加者はこの発言を尊重する旨述べるとともに適当な時期に北朝鮮への軽水炉提供問題について議論を行うことに合意した」と書かれていることを逆手に取っているようだ。

 南北会談に続いて、10月には米朝会談が予定されているようだ。6か国協議のどの国も協議の早期再開を望んでいる。しかし、ウラン問題の合意なくして、6か国協議は開かれないのが実情だ。

 ウラン濃縮活動の停止が6か国協議の前になるのか、後になるのか、この問題でどう折り合いが付くのだろうか?