2013年6月26日(水)
朴槿恵大統領の訪中の意味
韓国の朴槿恵大統領の訪中(27−30)は韓国の外交の軸足が、「米日」から、「米中」へと転換した、歴史的な訪中となるだろう。
韓国は朴正煕政権下の1965年に日本と国交を結んで以来、外交の枢軸を、同盟国の米国と友好国の日本に置いていた。
かつて北朝鮮から韓国は「二本の紐で支えられた冠のようなもの」と揶揄されたほど、一にも、二にも米国、日本との関係を重視してきた。
従って、朴正煕政権以来、政権発足後の歴代政権の最初の外遊地は決まって米国で、その次に日本であった。
しかし、今年2月25日に第18大統領に就任した初の女性大統領、朴槿恵大統領は、5月の訪米の後、
次の外遊先として選んだのは、日本でなく、中国であった。
理由は三つある。
一つは、経済的側面である。
中国との近年の急速な貿易拡大により,中国は韓国にとって輸出入ともに第一位の貿易相手国となった。
貿易規模は2000億ドルを突破し、現在2,150億ドルに達している。それも、韓国の478億ドルの黒字である。
これに比べて、日韓貿易は中韓の半分にも満たない800億ドル規模で、
韓国が中国と国交を結んだ1992年時の310億ドルから、約2.5倍しか伸びてない。
加えて、対日貿易は慢性的に赤字(2011年は約286億ドル)である。
朴槿恵大統領の訪中には全国経済人連合会(全経連)の許昌秀会長ら主要経済4団体トップを
含め過去最大規模となる71人の経済使節団が同行するが、両国間で自由貿易協定(FTA)が締結されれば、
日中貿易(3,336億ドル)を追い抜く日はそう遠くないと、韓国は展望している。
二つ目の理由は、日本との間には領土問題や歴史認識問題で外交摩擦が絶えないことだ。
朴槿恵大統領はオバマ大統領との会談で「日本は正しい歴史認識を持つべきだ」と発言したのに続き、
米議会での演説でも名指しこそなかったものの「「北東アジアでは国家間の経済依存が高まる一方で、
歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている。歴史に正しい認識を持てなければ明日はない」と
日本を間接的に批判していた。日韓の懸案が処理されない限り、対日関係強化には限界があると、
朴槿恵大統領は判断しているようだ。
安部政権は、「韓国とは自由と民主主義の価値観を共有している」と、中国への接近を深める、
中国語が堪能な親中派の朴大統領を引きとどめようと努めているが、未だ首脳会談のめどが立ってない。
習近平主席、李克強首相らとの首脳会談で「歴史認識問題」が触れられるかどうか、
朴槿恵政権の今後の対日外交を占ううえで興味深い。
最後に、韓国にとって最重要課題である核問題を含む「北朝鮮問題」における日中両国の影響力の差である。
北朝鮮の同盟国でもある中国は、経済的にも、外交的にも北朝鮮に大きな影響力を有しているが、
日本は北朝鮮とは外交関係もホットラインもなく、影響力には限界がある。
北朝鮮から中国を切り離し、取り込むだけでなく、北朝鮮に核を放棄させ、
南北関係を改善するための仲介者としても中国の存在は韓国にとって無視できない。
その北朝鮮の核問題で、中韓首脳会談でどのような合意をみるのか、米朝協議、6か国協議、
さらには日朝協議の展望を占ううでもこれまた注目される。