2008年3月25日(火)

ハンナラ党の対北政策

 韓国最大野党、ハンナラ党は年末の大統領選挙を控え、対北朝鮮政策の修正を検討している。ハンナラ党の「綱領」となる対北政策はこれまでの強硬路線から一転して融和路線となるものとみられている。

 ●吸収統一から連邦制統一にシフト

 大幅な政策転換を予想されているが、「文化日報」(3月23日)によると、その内容は;

 @北朝鮮を国家としてその実態を認める

 A南北間に相互代表部を設置する

 B米国からの戦時作戦統制権の転換に同意すする。

 C核不能化を前提とした平和体制の構築及び南北首脳会談に賛成する。

 D東西ドイツ統一方式に反対する。

 E検証を前提に人道支援と開城工団事業を積極的に支援する。

 北朝鮮を国家として認めれば、憲法第3条による韓国主導の「吸収統一」を破棄しなくてはならない。

 ハンナラ党は統一方式として1国家、1体制、2地域政府という中国・香港式統一、即ち「連邦制」を打ち出す方向である。

 北朝鮮はすでに1国家、2体制、2地方政府による「連邦制」を掲げており、ハンナラ党の「連邦制」はその前段階を指すことになる。

 米軍から韓国軍への戦時作戦統制権への移管についてもハンナラ党のこれまでの立場は、「反対」もしくは「再検討」であった。返還に同意するということは、実質的に米韓連合司令部の解体に同意したことに等しい。

 「代価のない、一方的な支援は行わない」とした既存の対北経済協力も、「検証可能」という条件付きながらも、容認している。「金正日政権の延命につながる」とか「大量殺傷兵器開発資金に利用される恐れがある」と中断を要求してきた南北合作による開城工業事業にも積極的な支援を表明している。

 李明博の公約「北朝鮮の一人当たり所得を3000ドルに増やす」(現在914ドル程度)

 ハンナラ党は所属議員に対して07年4月からは対北接触及び協力・交流事業に乗り出すように支持をし、ピョンヤン、金剛山、開城訪問を積極的に奨励している。

 今回の北政策の方針転換についてハンナラ党は「連邦は統一の過程とみればよい」「米国の作戦統帥権返還の意志を防ぐことはできない」などと説明している。

 しかし、ハンナラ党の支持基盤でもある「ライトコリア」など伝統保守勢力は、これまで金大中政権の太陽政策を批判し、現政権を「左派政権」と批判していたハンナラ党の変身は「裏切り行為である」と激しく反発している。

 猛反発、不満の理由は「北朝鮮は何一つ変わっていない」ことによるが、特に問題にしているのが次の2点である。

 @北朝鮮の核が除去されても、北の脅威は減少されない。115万人の軍人と大量殺傷兵器はそのまま存在している。

 A国軍捕虜も拉致被害者も一人も送還されていないし、北朝鮮国内の人権抑圧は改善されていない。

 「守旧派」と呼ばれる保守勢力は「ハンナラ党はこのままでは金正日独裁政権を認め、低い段階の連邦制を受け入れ、さらには米軍撤収から国家保安法の撤廃にも賛成しかねない」との危機感を深めている。

 その上で、国軍捕虜と拉致被害者の送還のないテロ支援国指定の解除と左派政権延長のための大統領選挙用の南北首脳会談に反対し、北朝鮮が核を完全に廃棄するまでの対北支援中断と核開発の資金源となっている金剛山観光と開城工業団地への支援中断をハンナラ党に強く要求していく構えだ。

 

 ※南北統一案の比較

 韓国  南北連合
(2国家、2体制、2政府)

 南北連合は国家が統一するまでの中間過程である。南北連合は国家間の関係でなく、民族内部の特殊関係、究極的な目標は、総選挙による統一民主共和国を目指す。

 共同事務所―南北評議会(100人つづ)−南北閣僚会議―南北頂上会議

 北朝鮮 南北連邦(1国家、2体制、2政府)

 南北連邦は現存する制度を容認する基礎の上で、南北が同等に参加する民族統一政府を樹立。その下で、南北が同等の権限をもって、地方自治政府を実施する。外交、国防などの権限も地方自治政府に付与する。この方式による高麗民主連邦共和国が最終ゴールである。