2010年1月11日(月)
金正日訪中よりもEU制裁に注目
韓国の連合ニュースによると、欧州連合(EU)は、金総書記の名代である義弟の張成沢部長と金英春人民武力相を含む13人の国防委員のうち6人に対して新たに制裁を科したようだ。日本の新聞にはベタ記事扱いとなっていたが、これは、無視できない重大なニュースだ。
制裁対象の中には張成沢と金英春両氏の他、金総書記の軍事ブレーンでもある呉克烈国防委副委員長、金総書記と常に行動を共にしている玄哲海人民軍総政治局長と朴慶京人民武力部副部長の二人、そして核とミサイル開発の党責任者である全炳浩軍需工業部長と実務責任者である朱奎昌軍需工業部第一副部長の二人も含まれていた。それだけではない。金総書記の個人資産を管理する金庫番である「39号室」の金東運室長も対象とされていた。政治判断で国防委員会委員長の金総書記は除外されたが、党及び軍No.2を含む側近らへの制裁は実質的に手足を縛られたのに等しい。
個人以外にも4つの企業に対して資産凍結が科せられたとのことだが、EU諸国との貿易拡大に乗り出していた矢先だけにEU26か国における資産凍結、送金禁止措置は北朝鮮にとっては経済的にも大きな痛手である。また、アフリカへの経由地であるEUへの出入国制限は、アフリカとの経済・軍事関係の強化に乗り出している北朝鮮のアフリカ外交にも支障を来すことであろう。
張部長は娘をパリに留学させるほどの海外通であり、故呉振宇元武力相に代表されるように党や軍幹部の多くはフランスの病院で治療していたが、今後はそれも難しくなってきた。
EUは国連安保理の決議に従い、すでに昨年7月に原子力総局関係者ら5人に対して制裁を科していたが、核開発の基礎を築いた徐相国・金日成物理学部講座長や辺英立国家科学院長らも含め今回の13人を加えると、総勢20人となり、国連がサダムフセイン政権に対して行った制裁と段々酷似してきた。