2012年5月3日(木)

肩すかしの国連制裁

 北朝鮮の「ミサイル(人工衛星)発射」への追加制裁を審議していた国連安保理傘下の制裁委員会には日米韓及びEU諸国から制裁対象として40社のリストが提示されていたが、蓋を開けてみると、新たに制裁対象にされたのは「鴨緑江開発銀行」と「朝鮮興進貿易会社」の3社に過ぎなかった。

 それもこれも、北朝鮮をあまり追い詰めると、暴発しかねないということで、中国がブレーキを掛けたことが原因のようだが、封じ込め政策に転じた米国も北朝鮮とはとことんチキンレースをしたくないようだ。

 サダム政権下のイラクに対する経済制裁では、制裁委員会が作成したブラックリストにはフセイン大統領を含め89人の個人と206人の組織がリストアップされたが、国連安保理の意向を無視し、ミサイル発射を3回、核実験を2回もやったのに北朝鮮の場合は、法人は今回の3社合わせてたったの11社。また、制裁対象の個人は原子力関係者3人と貿易会社社長2人の僅か5人しかいない。

 原子力関係者にいたっては、海外に資産もなければ、海外に出ることもない連中だ。法人は看板を変えれば、事業の再開は可能だ。これでは北朝鮮をおとなしくさせるのは無理だろう。

 考えてみると、前回の2009年の時も今回同様に北朝鮮企業3社が制裁対象に指定された。それでも北朝鮮は制裁リストが発表された5日後の4月29日に外務省が声明を発表し、核実験とICBMの実験を予告し、5月25日には核実験に踏み切っている。

 制裁対象が3社であれ、40社であれ、北朝鮮からすれば、核実験の口実ができたということなのかもしれない。前回同様に「さらなる自衛的措置を取る」との声明を出すかどうか。出れば、核実験に踏み切るだろう。