2009年6月15日(月)

国連制裁決議から「拉致」の文言はなかった!

 国連安保理決議がやっと採択された。北朝鮮の核実験から20日近くかかった。常任理事国の中国が色々とクレームを付けたせいだ。

 最大の焦点だった公海上での貨物検査の義務化が通らなかったのは、中国が北朝鮮を刺激しないよう配慮した結果と言われている。確かに北朝鮮をかばった面もなくはないが、総じて自国の利害に基づいて抵抗したまでの話だ。

 中国の抵抗にあって日本は決議が要求とおり通らなかったわけだが、同時にあれだけ強く求めていた「拉致」という文言も今度もまた決議に入らなかった。このことを取り上げた新聞は不思議なことに一紙もなかった。

 確か、制裁決議草案には当初「拉致問題をはじめとする人道問題」との表現で拉致問題の解決を求める文言が盛り込まれていたと日本では報道されていた。しかし、蓋を開けてみたら「拉致」という言葉はなく、三年前の決議と同じように「人道上の懸念」とだけなっていた。

 なぜ挿入されなかったのか、政府からの説明もない。この件で拉致被害者家族の会が政府に遺憾の意を示したとか、説明責任を求めたとの話も聞かない。あれだけ期待していたのに、である。

 家族会代表の飯塚繁雄さんは「前回の決議よりも内容が厳しくなったというが、肝心な貨物検査を義務付けられなかった。内容を厳しくしても実効性がないと役に立たない。ちょっと弱い気がする」と残念なコメントをしていたが、家族会が中国大使館に抗議したとの報道もない。「救う会」などの支援団体が朝鮮総連本部前で抗議をしたとの報道はあったもののこの決議の件で中国大使館に抗議をしたとの話しも聞かない。

 今朝、韓国の李明博大統領はワシントンに飛び立った。明日、オバマ大統領やクリントン国務長官らと会談する。ところが、出発前に李大統領は「米国に対して北朝鮮へのテロ支援国再指定を求めるつもりはない」と言っていた。

 家族会も支援団体も、政府も李明博政権の登場を拉致問題の日韓提携が可能になったと歓迎していた。「李政権は北朝鮮に太陽政策を取っていた前政権とは違う」と高く評価していた筈だ。困ったものだ。

 「李大統領が日本の足を引っ張るなら、韓国大使館にも」ということになってくるが、それはそれでまた大変なことだ。どの国もリップサービスとは裏腹に現実には自らの国益、利害関係で動いていることにもうそろそろ気づかなければならない。