2005年5月4日(水)

ホーム開催権を剥奪された背景

 国際サッカー連盟(FIFA)が北朝鮮に対してホームでの開催権を剥奪し、6月8日の日朝戦を第3国で行う処分を下したのは、日本サッカー協会の川渕三郎会長らのFIFAへの露骨なロビー外交によるものであると、日本の対応を批判する記事が韓国のメディアに登場している。

 それによると、川渕会長らは4月4日に来日したFIFAのブラッドリー会長に対して第3国での開催を働きかけたとのこと。FIFAは4月7日、ソニーと3億5千万ドルの公式スポンサー契約を交わしたこともあって日本の意向を無視できなかったのではないかと、推測している。

 処分の対象となった北朝鮮ーイラン戦は、一人の負傷者も出なかったにもかかわらず、大暴動が起きたコスタリカーアルバニア戦や105人もの逮捕者が出たマリー戦よりも厳しい裁定が下されたのはおかしいとの主張だ。

 日本がロビー外交を展開したのかどうかは分からないが、日本がピョンヤンでの開催を回避したいと願っていたのは事実。現に、鳥インフルエンザの発生を理由に第3国に変更するよう求めたりもしていた。第3国開催という目標を達成したことから川渕会長は北朝鮮に対して「東アジアのサッカー発展のため我慢してもらいたい」と言ったり、第3国開催で北朝鮮が負担する財政の支援を示唆するなど北朝鮮をなだめるような役割をしているが、韓国のメディアは「これこそ日本の二重プレイ」であると手厳しい。

 FIFAの副会長でもある韓国サッカー協会のチョン・モンジュン会長は「厳しすぎる」として、FIFAに対して処分を軽減するよう働きかけると公言している。

 ドイツW杯組織委員会委員長のベッケンバウア氏も「北朝鮮でW杯の予選競技が行われたことは一度もなかった。国際大会の経験も不足している北朝鮮当局が一生懸命準備してもミスはありえる。北朝鮮が異議を申し立て、FIFAがもう少し、状況を理解すれば、処分が軽減されるかもしれない」と北朝鮮に同情している。

 北朝鮮が上訴すれば、第3国開催処分の撤回を求めるのは必至だ。仮に第3国での試合に応じたとしても、日本が嫌う中国を主張するものと思われる。拉致被害者の曽我さんと夫、ジェンキンスさんの再会時のように中国を主張する北朝鮮と、マレーシアなど中国以外の第3国を主張する日本との間で今後、綱引きが再現されるかもしれない。