2011年10月21日(金)

金正日がカダフィの末路から得た教訓とは

 反政府軍に追われていたカダフィ大佐が拘束、殺害されたことで42年間続いたカダフィ政権がついに終焉した。

 リビアとはかつては「反米同志」の関係にあった北朝鮮は、金正日総書記はカダフィ大佐の哀れな最期を伝えた映像をどのような思いで見たのだろうか?

 民主化をせず、独裁体制を続ければ、最後はこのような末路が待っているとの教訓を得たのか、それとも西側に譲歩し、核開発計画の放棄など武装解除すれば命取りになると判断したのか、どちらか一方だが、おそらく結論は後者だろう。

 リビアの事態に国連安保理が事実上「軍事制裁」の決議を採択し、英仏を中心に7か国が連合して、カダフィ大佐の政府軍を攻撃したことがリビアの今日の事態を招いたと総括しているならば、カダフィ政権の崩壊は金正日体制をさらに硬直化させ、核問題の解決を遅らせることになりかねないと、このブログでも指摘してきたが、カダフィ一族の滅亡により、北朝鮮は先軍政治の路線を今後も歩むどころか、さらに一層強化していくこになるのではないだろうか。

 そのことは、リビアへの軍事制裁の決議が採択された際の北朝鮮外務省報道官の次のような談話に表れている。

 「リビア核放棄方式とは、安全保証と関係改善という甘い言葉で相手を武装解除させた後、軍事的に襲う侵略方式だということが明らかになった。地球上に強い権力と横暴な振る舞いが存在する限り、力があってこそ平和を守護できるという真理が改めて確証された」

 金総書記は、血まみれのカダフィ大佐の最期をみて「だから言っただろう。帝国主義者らを簡単に信頼するなと」とテレビに向かって一人つぶやいたに違いない。

 今から7年前核兵器開発の全面破棄と査察の即時受け入れを表明したカダフィ大佐は反米同志の金総書記に対して「査察に開放的であるべきだ。自らの国民に悲劇が降りかかるのを防ぐためにも北朝鮮は我々を見習うべきだ」と進言していた。

 このカダフィ大佐の発言に金総書記は当時、労働新聞を通じて「帝国主義者の威嚇・恐喝に負けて、戦う前にそれまで築いてきた国防力を自分の手で破壊したり、放棄する国がある。恥知らずにも、他の国に対して『模範』に見習えと、勧告までしている」と不快感を露わにしていた。この応酬以後、北朝鮮とリビアの関係はおかしくなり、両国の関係はしばらく絶縁状態にあった。

 金総書記にとってのリビアの教訓とは「核とミサイルを手にしている限り攻撃されない。どんな条件が提示されても、先に手放すわけにはいかない」ということかもしれない。ならば、仮に米朝協議、6か国協議が再開されても、国際社会が望む核問題の進展は期待できそうにもないということになる。