2010年12月20日(月)

南北の対立をやくざ映画で再現!

 韓国軍は18日から延坪島(ヨンビョンド)海域での射撃演習を実施することを予告していた。

 幸い、軍事衝突はなかった。土日は、韓国軍は表向き天候を理由に射撃訓練を延期したようだが、半島情勢が一触即発の状態にあることには変わりはない。

 南北の対立はやくざ映画を見ているようでもある。延坪島海域の縄張りをめぐる「仁義なき抗争」だ。映画のストリーは以下のとおりだ。

 第一抗争(朝鮮戦争)で黄海にある延坪島など5つの島を占拠した南組に対して北組は実力行使による奪還を企て、1973年から島周辺海域を荒らし始めた。1999年、2002年、そして2009年と過去3度、艦船による小競り合いがあったが、双方とも消耗戦を恐れ、全面戦争までにはいたらなかった。

 しかし、今年3月に北組のヒットマン(魚雷攻撃)により哨戒艦を撃沈され、さらには延坪島の組事務所まで奇襲攻撃を掛けられたことで面子を潰された南組の李明博組長は北組が今度縄張りにちょっとでも手を出せば、戦闘機による北組への空爆も辞さないと、北組の金正日組長に挑戦状を叩き付けた。

 李組長は元来武闘派(軍人出身)ではなく、経済畑出身だけに報復を叫ぶ組員をコントロールするためにも強硬な姿勢に転じざるを得なかった。12月18日から21日までの間に問題の延坪島海域で射撃訓練を強行すると、北組に果たし状を送った。

 これに対して北組も、組頭である金正日組長が病気持ちであることから三代目が約束された金正恩若頭(党軍事委員会副委員長)が陣頭指揮を執るが、まだ27歳と若輩であることからこれまた古参組員の信頼を勝ち取るためにも強気に出ざるを得なかった。北組は、韓国側の通告に対して即座に「射撃訓練を中止しなければ、第2、第3の予想できない自衛的打撃を加える」と南組を威圧した。。

 組の威信と面子をかけた南北の一触即発のにらみ合いに南組の上部団体である米国組と友好団体の日本組は南組の射撃訓練は「自衛手段として正当である」と擁護。これに対して北組と兄弟関係にある中国組と親戚関係にあるロシア組は全面戦争を避けるため南組に射撃訓練の中止を求めた。

 しかし、南組は射撃訓練を中止すれば、北組をのさばらすことになりかねないと、断固拒否。「もうルビコンの河を渡った。後には戻れない」とあくまで強行する構えだ。これに対して北組も昨日、沿岸砲部隊に戦闘動員態勢に入るよう指示し、南組のF−15戦闘機に対抗するためミグ23戦闘機をスクランブルさせるなど合戦に備える。

 こうした深刻な事態に米国組の実戦部隊のNo.2のジェームズ・カートライト統合参謀副議長は「韓国の射撃訓練に北組が打ち返せば、連鎖反応的に応酬に発展し、統制不能になる恐れがある」と懸念を表明し、北朝鮮に手を出さないよう強く自制を求めた。イラクやアフガンで抗争中の米国組としては、朝鮮半島に手が回らないのが実情だ。

 米国組はとりあえず延坪島に組員21人を急派。狙いは、「米国組員への攻撃は、米国への宣戦布告となる」と、北組を牽制することにあった。同時に米国組の許可なく、北組を刺激し、ドンパチしないよう南側を抑える狙いもあった。

 米国組はいきり立つ南組に対して射撃訓練は認めるが、短時間で済ますこと、絶対に北に向かって発砲しないよう監視することにしているが、北組は米国組の保護の下で南組が射撃訓練を実施すれば「これから起こり得る第2次延坪島事件のすべての責任は米国組にある」と猛反発。

 ところが、その一方で、米国組からの客人(米ニューメキシコ州のリチャードソン知事)を受け入れ、収拾に向けた交渉も秘かに開始。

 北組に招かれた米国組の客人は南組の射撃訓練は北組に向けられないので目をつぶるよう提言。これに対して北組は「南組の砲射撃が強行され、マジソンライン(限界線)を超えてきた場合、半島情勢の爆発とそれに伴う惨禍は避けられないだろう」とタンカを切ったもののこれまでの「どこに落としても我々の縄張りなので反撃する」から「マジソンラインを超えた場合」と、少し態度を和らげた。米国組が盃(平和協定)を交わしたいとの北組の要求を受け入れ、交渉に応じるなら、今回は譲歩してもよいと仄めかしているようでもあった。

 南組も当初は好天が予想された初日の18日か、あるいは19日にも射撃演習を決行する計画だったが、米国、ロシア、フランス、英国、中国など世界を仕切る5大組織(国連安保理常任理事国)が一同に会し、南北衝突を回避する話し合いに入ったことで20日、もしくは21日に決行日を引き延ばした。

 予報では、今日午前中は、現場周辺には霧が立ち込め、天気は良くないとのことだが、霧が晴れれば、午後1時から訓練を始めるようだ。5大組織の話がまとまり、直前になって中止となるのか、それとも、決裂となって、強行するのか、まるで時限爆弾のようだ。

 映画よりも、現実は怖い。