2010年12月24日(金)

1ヶ月間に5度の軍事演習

 韓国では昨日からまた軍事演習が始まった。非武装地帯に近い京畿道の抱川市で自走砲や多連装ロケット砲による実弾訓練や空軍戦闘機による大規模な射撃訓練が行われる。陸上での訓練としては史上最大規模らしい。

 陸軍の砲撃訓練と同時に海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)から約100キロ離れた日本海(南側の海域)でも、海軍による哨戒艦や護衛艦など軍艦6隻を投入した海上砲射撃訓練が行われている。

 世界10大ニュースに入るほどの北朝鮮の攻撃によるショッキングな事件が起きただけに北朝鮮の脅威に対する抑止として、自衛権の一環として軍事訓練をやるのは、当然と言えば、当然だ。立場が逆なら、北朝鮮も同じ事をやるだろう。しかし、連続して4度も、5度もとなると少し度が過ぎるのではないだろうか?

 延坪島事件発生直後の11月28日から12月1日まで黄海で初めて米空母「ジョージワシントン」を動員して史上最大規模の米韓合同軍事演習が実施された。

 米韓軍事演習終了後の6日から12日までは韓国軍が単独で黄海(西海)、東海、南海で合わせて29箇所で海上射撃訓練が実施された。これまた史上最大規模だった。

 海上射撃訓練が12日に終わったかと思ったら、間髪を入れず、13日から17日まで再び東海、黄海(西海)、南海の27か所で射撃訓練が実施された。

 これで軍事演習は終了と思いきや、18日から21日までまたもや黄海周辺にイージス艦や駆逐艦など艦船10隻を動員し、さらにFー15戦闘機まで空中待機させて実施した。それも、問題の延坪島海域周辺で行った。中国やロシアの反対を押し切って強行された。

 そして、昨日から陸海による合同軍事演習が始まった。25日まで行なわれる。1ヶ月の間、5度も軍事演習を実施したことになる。全国で実施された空襲警報訓練などを入れると、ほぼ毎日やっている計算となる。

 一連の軍事演習は北朝鮮の新たな挑発を牽制、阻止するためのものであると説明されているが、これだけ頻度が多いと、怒りが鎮まらない韓国軍が仕返し、報復したがいために北朝鮮の挑発を誘発しようとしているのではないかとの錯覚さえ覚えてしまう。

 韓国の軍事演習を正当化するため「北朝鮮の追加挑発に備えて」との表現が盛んに使われているが、延坪島事件以後の南北の動きを客観的にみていると、北朝鮮向けラジオによる非難放送の再開、韓国軍による非武装地帯からの40万枚のビラ撒き、延坪島からの脱北団体による金正日体制打倒を呼びかけた10万枚のビラ撒き、そして、南北合意によって中断されていた7年ぶりの非武装地帯付近でのクリスマスツリーの電飾の点火など、しきりに挑発しているのは、むしろ韓国の方ではないかと、正直疑わざるを得ない。

 日本政府もマスコミも韓国の一連の軍事行動を北朝鮮の追加挑発を阻止するための自衛手段として正当化しているようだが、朝鮮半島で火が噴けば、火の粉を被るのは日本である。

 そう言えば、菅直人総理は確か「韓国と提携して、北朝鮮と対抗する」と言っていた。「対処」とか「対応」という表現ではでなく、「対抗」という言葉を使っていた。これは、日本は韓国と一緒になって北朝鮮と戦うという意味にも解釈される。

 日本は韓国との間に安保条約はない。韓国を守る軍事的責務はない。日本の島が攻撃されたならばいざ知らず、韓国の島が攻撃されても、日本は韓国と一緒に北朝鮮と一戦交える覚悟なのだろうか。

 米国のジェームズ・カートライト統合参謀副議長は「韓国の射撃訓練に北朝鮮が打ち返せば、連鎖反応的に応酬に発展し、統制不能になる恐れがある」と懸念を表明していたし、ロシアも「北朝鮮が反撃すれば、大変なことになりかねない」と中国と一緒にこれ以上、朝鮮半島の緊張を高めるような訓練を中止するよう韓国に自制を求めていた。

 日本も日本の安全保障を考え、友好国の韓国に対してもうそろそろ冷静になるよう働きかけたらどうだろうか。盲目的支援は、へたをすると、日本の安全保障を損なうことになりかねない。暴発は、必ずしも北朝鮮の専売特許ではないからだ。

 韓国の李明博大統領は昨日、軍事境界線に近い前線部隊を訪れ、「奇襲攻撃を受けたら容赦なく叩け」と訓示したようだ。これに対して北朝鮮の金永春人民武力相は「北朝鮮の革命軍は必要とあらばいつでも正義の聖戦を行う準備が整っている」と返していた。

 南北に好き勝手にさせていたら、悪夢が正夢になるとも限らない。