2011年2月6日(日)

日中、日韓とでは天地の差の日朝貿易

 日中貿易は3千億ドル超えている。日米貿易を1千億ドル近くも引き離している。1972年に国交を結ぶまでは両国は「LT貿易」という名の民間レベルでほそぼそとやっていたが、国交樹立後約40年で3千億ドルを突破し、中国はいつの間にか日本の貿易パートナー1位となったわけだから、日本が米国に追随し、中国の国連加盟にも反対し、また中国を国家として承認せず、「中共」と呼称していた古き時代には信じがたい数字だ。

 日本の経済成長、繁栄維持はもはや中国を抜きに語れなくなった。時代の流れとは言え、米国の反発と、右翼の抗議、国内の反中派を押し切り、米国より先駆けて、中国との関係正常化、国交樹立を決断し、踏み切った当時の自民党の田中角栄、福田赳夫政権にはそれなりに先見の目があったということだ。

 同じことが韓国との関係にも当てはまる。国交が結ばれた1965年までの日韓貿易はたったの2億ドル。45年経った今では、800億ドルを超えている。それも日本の貿易黒字だ。日本が約300億ドルも儲かっているのだ。

 北朝鮮の指令を受けた朝鮮総聯や社会党、共産党を中心とした国内の反韓勢力による「日韓条約」反対運動に屈せず、韓国との国交に踏み切った当時の自民党の池田隼人、佐藤栄作政権の選択は、米国からの強いプッシュがあったにせよ、間違ってなかったということになる。結果論だが、これまた、当時の自民党政権は時代の流れを見越していたということになる。

 日本は朝鮮半島のもう一方の当事者である北朝鮮とは、国交がなくても2001年まで貿易量は4億7千5百万ドル(390億ドル、1ドル=82円で換算)あった。微々たる額だが、今ではそれも、日本の経済制裁による断絶でほぼゼロ。調べてみると、過去最高は1980年当時で、貿易額は1,259億円相当あったそうだ。

 今朝(6日)の朝日新聞の経済欄に「北朝鮮 20年ぶりの長期経済計画」という小見出しの記事が載っていたが、旧知のサムソン経済研究所の董竜昇(トン・ヨンスン)氏が核問題を解決し、中国のように改革開放に転じ、国際社会から信頼されなければ、北朝鮮の経済再建は難しいとのコメントを寄せていた。そのとおりだ。

 北朝鮮の経済発展の鍵は米国が握っていると言っても過言ではない。北朝鮮がサインした6か国協議共同声明に基づき、核の放棄を誠実に履行すれば、米国の後押しで経済の展望は開かれる。

 核を放棄し、米国との間で平和条約と国交が結ばれれば、何より軍事費の削減が可能だ。北朝鮮の軍事費は、国民総所得(GNI)の30%を上回る程度(韓国国防白書)と推定されている。

 韓国銀行が2007年に発表した「2006年の北の経済成長率の推定結果」によれば、北のGNIは約256億ドル。ということは、北の実質的軍事費は80億ドル前後となる。軍事費を5%削減しただけでも、慢性的に不足している食糧100万トンの調達と30〜40万kwの電力不足を十分に解消できる。

 北朝鮮が核さえ放棄すれば、米国が保証人となり国際機構加入前の特別信託基金や国際復興開発銀行(IRBD),世界銀行開発協会(IDA)や国際通貨基金(IMF)からの融資も可能となる。

 ベトナムの場合、経済制裁が全面解除される前の1993年8月にクリントン大統領(当時)が国際金融機関による対ベトナム借款供与を承認しており、1年後の94年10月にIBRD(世界銀行)から1億5千万ドルの開発融資とIMFから5億3千6百万ドルの構造造成プログラム融資支援を受けた。

 さらに、ベトナムは1975年から2005年までの20年間で外国から238億ドルの支援を受けることもできた。それが、今日のベトナムのめざましい経済発展の礎となっていることは言うまでもない。

 昨年10月に公開された韓国国防研究院発行の「国防政策研究」によると、北朝鮮が核を放棄すれば、韓国との貿易額は18億2千万ドル(09年)から5.7倍の104億ドルに、中国との貿易額も5.5倍の110億ドルに達すると予測されている。さらに、米国と国交が正常化し、世界貿易機構(WTO)に加入すれば、北朝鮮の対外貿易額は551億ドルに跳ね上がるとのことだ。

 北朝鮮は豊かな鉱物資源(レアメタル)に恵まれている。

 韓国の現代経済研究所が08年2月に発表した「EU新アジア戦略分析と視点」と題する報告書を読むと、EU諸国は北朝鮮を「鉱物資源の宝庫」とみなしている。北朝鮮を「人権抑圧国」と非難しながらも、EUが07年から北朝鮮との間で経済セミナーを開催し、毎年平壌で開催されている国際商品展覧会に出品しているのも、すべては資源確保のためだ。

 北朝鮮には世界10位に入る鉱物資源だけでも10種類近くあるとされている。地下資源の潜在的価値は最低で375兆円(大韓鉱業振興公社南北資源協力チームの報告書=06年)から480兆円(南北交流支援委員会資源開発室の報告書=07年11月)と見積もられている。

 昨年12月に韓国の統計庁が発表した北朝鮮の統計指標によれば、国際的なレアメタルの価格上昇で、北朝鮮鉱物埋蔵量の潜在価値は6,983兆ウォン(約498兆円)だそうだ。資源のない日本にとっては、日本海を挟んで目と鼻の先にある北朝鮮の資源は魅力的だ。

 日本同様に資源のない韓国と国交を結んで40年間で800億ドル貿易額に達し、第3位の貿易パートナーとなったわけだから、北朝鮮と国交が正常化され、貿易が再開されれば、日朝貿易は飛躍的に伸びるであろう。「資源調達先」の北朝鮮は日本の経済界にとってはまさに「黄金の市場」となるだろう。特に大企業では消化不良を起こす恐れのある北朝鮮は中小企業にとっては格好の市場となるだろう。