2011年1月11日(火)

日朝が「エール」を交換

 「今年の大きなテーマは日朝間の話し合いだ」と語った前原誠司外相の発言を取り上げた際に奇しくも同じ日、北朝鮮の労働新聞が『敵対国との関係を改善するため努力する』との論評を掲載していた。日本を指して言っているのか定かではないが、『自国の問題を自ら解決するという独立的原則に立つことが大事だ』と注文を付けていた.

 朝鮮中央通信は8日の論評で、前原発言を「肯定的な動き」と評価し、「わが国と友好的に接する国々とは、いつでも会って対話する用意がある」と言ってきた。一報を伝えた共同通信によると、「民主党への政権交代以降、北朝鮮が日朝関係改善に関する日本政府当局者の発言を前向きに評価したのは初めて」とのことだ。

 民主党政権が発足したのは、一昨年9月16日。民主党政権下の初代外務大臣となった岡田克也幹事長(現在)は外相就任当時、こう着状態にある日朝関係についての打開策を聞かれた際「焦って我々からいろいろな提案をする必要はない」と述べ、またこの年の10月には「当面、北朝鮮から何らかの働きかけがあるのを見極めたい」と、「待ちの姿勢を」を示していた。

 その一方で、拉致担当大臣に任命された中井洽国家公安委員長は「圧力を強める。日本にはそれしかない」と公言し、自民党政権下でできなかった黄長Y元労働党書記、金賢姫元工作員の訪日を実現させた。金賢姫元工作員の訪日は管直人政権下で実現している。

 鳩山政権下では昨年3月に発生した韓国哨戒艦沈没事件で、また管政権下では11月に起きた延坪島砲撃事件で先頭に立って国際社会の場で北朝鮮を非難した。北朝鮮在住の被爆者らへの診療を目的とした広島の医師団の訪朝さえ認めないほど、管政権の北朝鮮への対応も強硬だった。朝鮮高校への無償化問題への対応以外、北朝鮮が軟化する材料はどこにもみられなかった。1か月前に菅首相が、朝鮮半島有事が起きた場合、北朝鮮による拉致被害者の救出のため、自衛隊派遣の可能性を政府内で検討していると発言した際には猛反発したほどだ。

 日朝交渉再開に向けての北朝鮮の原則は、日本政府による過去の清算への取り組みである。宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使は昨年10月12日に「日本が関係改善しようとするなら、(日朝の)根本的な問題を回避せず、実際の行動で示すべきだ」と強調したばかりだ。

 日朝どちらが先に動いたのか、あるいは呼びかけたのか、大いに気になるところだ。