2012年1月13日(金)

お門違いの日朝非公式協議への韓国のクレーム

 民主党の中井洽・元拉致問題相は昨日、中国の瀋陽で北朝鮮関係者と接触した事実を認めた。接触した相手の名前は伏せていたが、報道されているように宋日昊(ソン・イルホ)朝日国交正常化交渉担当大使であることは間違いない。

 今回の日朝非公式協議に日本は韓国からいろいろクレームをつけられているようだ。

 年頭から「李明博政権とは永遠に付き合わない」と北朝鮮から絶交宣言された韓国政府は日米韓の協力関係にひびが入るとの理由から韓国頭越しの日朝秘密協議に神経を尖らせ、昨日訪韓した6か国協議の日本の首席代表を務める外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長に事情説明を求めたそうだ。

 韓国側の言い分は、仮に日本が独自に北朝鮮支援を実施すれば、北朝鮮核問題解決のための食糧支援カードが使えなくなる、そうなれば、ウラン濃縮計画(UEP)中断など非核化事前措置履行に悪影響を及ぼしかねないということだ。

 「連合ニュース」によると、韓国政府の関係者は「もし拉致問題解決のために、日本が北朝鮮の望むものを与えれば、北朝鮮核問題解決をめぐるプロセスに影響が出る。事実関係と非公式接触に至った経緯について、しっかりと説明してほしい」と語ったそうだが、確かに韓国の言い分には一理ある。が、勝手なことをするなと言うなら、韓国政府も大いに反省すべきことがある。

 李明博政権は日本が拉致問題で北朝鮮に対して全面的な経済制裁だけでなく人道支援までも止めているのを知りながら、南北関係改善のため北朝鮮に対してこれまで人道支援を行ってきたし、また柳佑益(リュ・ウイク)統一相は5日、ソウルでの記者会見で「北朝鮮が韓国との対話再開に応じれば、北朝鮮側が求める経済協力についても議題にする」とまで公言していた。

 南北対話のため韓国が北朝鮮に経済協力をすれば、当然、日本の経済制裁カードは色褪せてしまうのは言うまでもない。柳統一相の頭の中にはおそらく日本への配慮は微塵もないだろう。

 また、韓国政府が金正日総書記存命中に南北首脳会談のための非公式接触も行ってきたのも紛れもない事実だ。それでも一度も日本にしっかりと説明したためしがない。

 どの国にも最優先の外交課題がある。韓国にとって南北対話が最優先なら、日本もまた拉致問題解決のため日朝交渉が最重要課題だ。国民の最大関心事であるからだ。従って、南北対話が再開されるまで日朝協議をいつまでもお預けというわけにはいかない。それでなくても、日本は哨戒艦沈没事件や延坪島砲撃事件で北朝鮮に態度を硬化させた韓国政府への配慮から律儀にもこれまで北朝鮮との対話を自粛してきたわけだ。

 自国の国益を最優先する外交をするのが、自主外交だ。第一、仮に日本から食糧支援の話があったとしても、その実現は、6か国協議の再開、進展が前提条件になることは言うまでもない。日本はそれほど愚かではない。