2012年3月14日(水)

やはり、松原大臣には荷が重すぎる

 松原仁拉致問題担当相が北朝鮮への人道支援について「拉致問題が進展し、一定の解決とみなすことが多くの関係者の中で合意できれば人道支援は可能になる」と記者会見で語っていた。

 人道支援については「独裁体制の延命に繋がる」との考えからこれまで「絶対NO」だったのに「条件付きOK」に軌道修正していたからだ。この発言には拉致被害者家族会も「救う会」もおそらくびっくりしたのではないだろうか。

 「家族会」や「救う会」の「松原大臣待望論」はなによりも民主党拉致問題対策副本長や拉致議連事務局長という肩書だけでなく、彼の一貫してブレないその強硬発言にあったからだ。

 例えば、2004年12月10日に衆議院拉致問題特別委員会では「拉致における最高責任は金正日が担うというふうに思っている。最終的にこの問題の解決は、金正日体制の崩壊しかないというのが率直な印象だ」と発言していた。拉致問題の解決は北朝鮮の体制崩壊しかないというのが松原大臣の一貫した持論だった。

 また、2006年1月27日の衆議院拉致問題特別委員会では「彼ら(朝鮮総連幹部)の自由往来を認めることが、日本が北朝鮮に圧力を加えることに本気ではないとの誤ったメッセ−ジを送る可能性があると思っている。できればこの6人の総連幹部、最高人民会議代議員に関しては日本との往来をやめるということを是非政府部内で検討してもらいたい」と、北朝鮮に対する制裁を他の誰よりも先頭に立って強く求めていた。

 さらに2007年6月19日の衆議院拉致問題特別委員会でも「被害者全員の帰還というのは金正日体制が崩壊しない限りわからない。この拉致を引き起こした当事者を逮捕することである。犯罪においては、その当事者が捕まらなければいけないわけである。従って、その犯罪の当事者はだれか、金正日その人が当事者である可能性があるならば、この人間も捕まらなければいけない。真相の解明というのは、何分、嘘を平気でつく、横田めぐみさんの骨で違うものを出してきて何とも思わない国家であるから、そういった意味では、これはそこまでいかないといけないんだというのを腹の底にきちっとおさめてもらわないと議論は進まないと思っている」と発言していた。

 圧力と制裁の強化で金正日体制の打倒をめざしてきた「家族会」や「救う会」からしてはこれほど頼りになる政治家はそうざらにはいない。

 それが、「拉致問題が進展すれば人道支援を検討してもよい」とは、やはり、直前の「朝日関係の本質も知らない松原のような人間が、拉致担当相を気取って、人気取りのために身の程知らずに戯れるほど、2国間関係は悪化する」との朝鮮中央通信の論評が気になったのだろうか。

 いつもの松原さんなら「キム・ショウオンが私を相手にしないというなら結構だ。さらに圧力と制裁を強化しよう」とタンカを切るのだが、何とも弱気な。口癖の「毅然たる外交」はどうしたのだろうか?やはり大臣となると、そういうわけにはいかないのだろうか。

 年内に選挙があるかもしれないことから拉致問題で名を馳せた松原大臣としては成果、手柄を立てたい気持ちはわからないわけでもないが、どうみても松原大臣では荷が重そうな気がしてならない。