2005年12月26日(月)

拉致問題の未解決を認めた!?

 北京で開かれた日朝政府間協議の結果、国交正常化交渉再開で合意した。外務省は、日本側が11月に要求した拉致、安全保障、国交正常化の三つのテーマの同時協議案を北朝鮮が受け入れたと「成果」を強調している。「拉致問題は解決済み」との立場を取ってきた北朝鮮が「拉致問題を含め、未解決の懸案を誠意持って努力する」と言ったと、朝刊各紙には書かれている。本当にこのようなことを先方は言ったのだろうか。本当に「未解決」と認めたのだろうか。ひょっとすると、日本側の勝手な解釈ではないだろうか。

 ソン・イルホ外務省副局長は「我々は解決したと言い、日本は解決していないと言っている。何が解決なのか、一度すりあわせなくてはならない」と言ったそうだが、換言するならば、「日本にとっての未解決の問題」というのが先方の解釈ではないだろうか。「拉致を未解決の問題として認めさせた」ことを「手柄」であるかのように吹聴しているが、残念ながら今回の合意にもまた「拉致」という言葉は一言も盛り込まれてなかった。

 合意は正確に表現すると、「不幸な過去を清算し、懸案事項の解決を図る」「双方が関心を持つ懸案事項に向け誠意を持って努力し、具体的措置を講じる」。それ以下でも、以上でもない。

 読売新聞によると、斉木昭隆外務省アジア太平洋審議官が「横田めぐみさんの偽遺骨問題から1年間、あなた方はなにをしてきたのか。誠意を見せて欲しい」と声を張り上げたとのことだが、北朝鮮はそれにどう対応したのか、何一つ明らかにされていない。「子供を帰せば、国交交渉に応じる」との約束を反故にしたことやジェンキンス氏への日本の対応を問題にしてきた北朝鮮側は果たして声を張り上げなかったのだろうか。

 斉木審議官は「拉致問題は解決済み」との立場を北朝鮮側が変えない限り、「平行協議には応じない」と、強気に出たと言われているが、これもおかしな話だ。「平行協議」を申し入れたのは日本側の方だ。その回答を得るため今回、北京に行ったわけだ。

 北朝鮮が「応じない」というなら、話はわかるが、要請した側が「応じない」なんてどう考えても辻褄が合わない。日本側代表団からの一連の「説明」は、外務省が協議にいかに毅然と臨んだか、強気だったかをポーズとして示したかったのではないだろうか。しかし、現実には遺骨問題でも偽物であることを認めるどころか、「専門家を交えて協議しよう」と交わされる始末だ。どうみても、「拉致被害者家族の会」や日本の世論向けのエクスキューズにしか聞こえない。

 斉木氏は今回の協議を最後に駐米公使に転出し、国民の最大課題で、最も重要な外交懸案である拉致問題とはさよならする。前任の薮中さんもそうだが、皆さん、途中で「バイバイ」してしまう。人事異動で仕方がないといえば、それまでだが、一方の北朝鮮の交渉責任者の宋副局長は不変だ。

 日本側は「時間稼ぎさせてはならない」と言っているが、北朝鮮に時間的余裕を与えているのは、むしろ日本側ではないだろうか。