2011年11月7日(月)

「平壌住民名簿」から「めぐみさん生存情報」

 韓国からまたまた、横田めぐみさんに関する「生存情報」が流れてきた。先月、韓国の女性国会議員が公にした「横田めぐみさんは2004年末か05年初めには生きていた」との脱北者情報に続く「第二弾」だ。

 今回は、裏の取りようのない脱北者情報ではなく、「平壌市民の住民名簿」がその「根拠」となっている。

 韓国の有力紙「朝鮮日報」系列の週刊誌「週刊朝鮮」は10月31日号で「北朝鮮・平壌に住む住民名簿を入手」と報じたが、その後、精査した結果、その名簿の中に横田めぐみさんと生年月日や家族の名前が一致する女性がいたことがわかったとして、本日発売の号で関連記事を掲載する。

 名簿には平壌市民210万8032人分の生年月日、住所、職業、血液型、出身地、結婚相手の名前など18項目にわたる個人情報が細かく記載されているが、平壌市内に横田さんと生年月日(1964年10月5日生まれ)が同じの女性は約90人存在。その中の一人、「ハン・ソンエ」(「ハン・ソネ」とも発音)という女性が「めぐみさんでは?」と取り沙汰されている。

 というのも、「ハン・ソンエ」という女性は配偶者の夫が、めぐみさんの夫であることが判明している韓国人拉致被害者、金英男(キム・ヨンナム)さんと同姓同名であり、また、「家族」事項に記載されている同居者がめぐみさんの娘、「キム・ウンギョン(別名ヘギョン)」とやはり同姓同名で同じ「金日成総合大学生」と記されていたからにほかならない。

 但し、「ハン・ソンエ」は北朝鮮が公表しためぐみさんの朝鮮名(リュ・ヘオクとリュ・オッキという二つの名前を持っていた)と名前が異なり、また血液型も異なることから別人の可能性もあるが、「週刊朝鮮」は夫と娘の名前が同一であることから「めぐみさんではないか」と推定している。

 北朝鮮の治安維持機関が作成したとされるこの名簿は2005年に作成されている。従って、「ハン・ソンエ」なる女性が本当にめぐみさんなら、めぐみさんは北朝鮮が主張するように自殺しておらず、少なくとも2005年までは夫と娘と一緒に平壌で暮らしていたことになる。

 この「平壌住民名簿」には「日本出身者」が6、500人おり、86人は「日本国籍」と記載されていたことが「週刊朝鮮」の分析の結果、判明している。当然、「日本出身者」の中には在日朝鮮人帰国者や日本人妻も含まれているものと推測されるが、中には日本人残留孤児や拉致被害者も含まれている可能性も否定できず、「週刊朝鮮」では「日本政府は(名簿を)綿密に検討する必要があるだろう」と書いている。

 日本国籍の86人については48人が戦前世代(朝鮮戦争停戦年の1953年以前に生まれた人々)、53年以後の戦後世代は38人で、その中には1980年代生まれも少数ながら含まれているとされる。当然、よど号犯及び妻子らもその中には含まれているのだろうが、但し、1980年以降に生まれの20人の子供らの大半は2005年までに北朝鮮出国し、すでに日本に帰国している。

 現在、「週刊朝鮮」では「日本出身者」「日本国籍保持者」の中に安否不明の日本人拉致被害者(12人)や300人近くいると推定されている日本人特定失踪者が含まれていないか、日本側から提供されたデーターを基に確認作業を行っている。

 仮に「ハン・ソンエ」なる女性がめぐみさんで2005年まで平壌で暮らしていたなら、北朝鮮が発表しためぐみさんの「1994年の死亡」は全面否定されるだけでなく、2006年7月に訪朝した日本人記者団に語った「もしめぐみが生きているなら、私がほかの女性と結婚できるだろうか」と語った夫、金英男さんの1997年の再婚話も、さらに後妻との間でできた子供(1999年生)も壮大なでっちあげということになる。

 ということは、金英男さんが28年ぶりに金剛山の南北離散家族面談場で母親と姉に再会し、妻子を紹介した2006年6月の「面会シーン」も全部北朝鮮当局のやらせということになる。娘のヘギョン(本名:ウンギョン)さんも結果として、父親に合わせて嘘をつき、演技をさせられていたことになる。

 「2005年初まで生存していた」との先の脱北者の発言同様に2005年作成の「平壌住民名簿」を日本政府は徹底検証する必要があるだろう。