2011年11月9日(水)
「平壌住民名簿」の「めぐみさん生存情報」の検証
例の「めぐみさん生存説」を伝えた「週刊朝鮮」の記事だが、昨日、手に入れ、全文目を通してみた。
表示には「平壌のハン・ソンエはめぐみなのか?」と「?」を付けていたが、記事の冒頭には「日本人拉致被害者の横田めぐみ(46歳)と推定される人物が平壌で暮らしていることが明らかになった」とほぼ断定的に書いていた。
問題の「ハン・ソンエ」なる女性が横田めぐみさんであるとした「週刊朝鮮」の根拠は薄弱である。
「週刊朝鮮」は@「ハン・ソンエ」がめぐみさんと生年月日が同じであるA夫の名前も同じ「キム・ヨンナム」であるB娘の名前も同じで「キム・ウンギョン」で同じ大学(金日成総合大学)に通っていたと主に三つの根拠を基に「ハン・ソンエ」がめぐみさんであるとほぼ断じている。
しかし、@については平壌だけでめぐみさんと同じ生年月日の女性が90人もいることから生年月日が同じであっても不思議ではない、まして「ハン・ソンエ」の血液型がA型に対してめぐみさんはB型と異なる。A「キム・ヨンナム」という名前についても、朝鮮半島では4人のうち一人が「キム(金)」の姓であり、「キム・ヨンナム」という名は日本で言えば、さしずめ「鈴木一郎」のように極めてありふれた名前で、夫が同姓同名であっても不思議ではないB娘の「キム・ウンギョン」については、生年月日が「1987年10月25日」で、「1987年9月13日」生まれめぐみさんの娘さんとは異なることなどを番組では指摘した。
さらに、今回「週刊朝鮮」の記事を読んで新たな違いがわかった。
市民台帳(身上資料)には「ハン・ソンエ」の娘、「キム・ウンギョン」の出生地は「(平壌市)中区域チャングァン洞」と記されていたが、めぐみさんの「ウンギョン」さんは順安区域太陽里(テヤンリ)で生まれていることだ。明らかに出生地が異なる。
日本に帰国している拉致被害者の蓮池、地村夫妻らは1986年に平壌南東から車で1時間ほど入った農村地帯の中和郡忠龍里(チュンヨンリ)を離れ、順安区域太陽里に移っているが、蓮池、地村夫妻の証言によれば、めぐみさんも1986年8月に順安区域の太陽里の招待所に引越ししてきている。そして、ここで翌年の1987年9月13日に「ヘギョン」こと「ウンギョン」さんを出産している。
そのことについては「赤ちゃんが生まれたときは皆でお祝いした。夫のキム・チョルジュンさん(キム・ヨンナムさんの仮名)と生まれたばかりの赤ちゃんを乗せたベビーカーを押して一緒に散歩していた」との蓮池、地村夫妻らが証言していることから間違いない。
この他にも「週刊朝鮮」の記事には論理の飛躍というか、強引に結び付けようとしている部分が随所にあるが、結論を言えば、「週刊朝鮮」が入手した住民台帳は本物であり、「ハン・ソンエ」一家も存在し、夫の名前が「キム・ヨンナム」で娘の名前も「キム・ウンギョン」であることは間違いないとしても肝心の「ハン・ソンエ」なる女性は横田めぐみさんではない可能性が極めて高い。