2012年6月18日(月)

「横田めぐみ2004年死亡説」の真偽

 韓国紙「朝鮮日報」(15日付)は拉致被害者の横田めぐみさんが「2004年12月14日に死亡している」との韓国の「拉北者(拉致被害者)家族会」の崔成龍(チェ・ソンヨン)代表の発言を掲載していた。

 崔成龍代表は「死亡」を北朝鮮内部関係者が平壌にある保健省関係機関に保管されていた「死亡確認書」によって確認したとのことだ。「死亡確認書」には韓国人拉致被害者6人と共にめぐみさんについて「うつ病で2004年12月14日死亡」と記されていたとのことだ。

 死亡確認書原本の発行機関は平壌郊外の「第49予防院」だそうだが、崔代表が入手したのは原本でも、あるいはそのコピーでもない。身分不明の「北朝鮮内部関係者」が原本から書き写したものだそうだ。本当だろうか?

 それにしても、政府認定の安否不明者は12人もいるのになぜいつも、横田めぐみさんだけが話題になるのだろう。仮にこれが事実なら、横田めぐみさん以外の他の安否不明者11人は全員生存していることになる。他の拉致被害者の家族は崔代表の「証言」をどう受け止めたのだろうか?

 崔代表は過去にも「横田めぐみ死亡説」を「北朝鮮内部関係者」や「協力者」から得た情報として流し、日本政府関係者にも伝えていたそうだ。「それなのに日本政府は受け入れようとしない」と不満を漏らしていたりもした。自らの発言を立証するため、あるいは自らが先頭になって取り組んでいる韓国人拉致問題でマスコミの注目を浴びたいがために「確認書」なるものを小細工した可能性はないだろうか?

 仮に「2004年死亡」が事実ならば、北朝鮮が日本政府に通告した「1994年死亡説」は真っ赤な嘘となるが、同時にこれまで報道されてきた数々の「生存説」も否定されることになるから実におかしなことになる。

 例えば、同じ韓国の有力紙「朝鮮日報」系の週刊誌「週刊朝鮮」は昨年10月に「北朝鮮・平壌に住む住民名簿を入手」と報じ、その名簿の中に横田めぐみさんと生年月日や家族の名前が一致する女性がいたことから「めぐみさん生存説」を伝えていたことはまだ記憶に新しい。

 また、一か月後の11月にも「脱北者問題」に熱心に取り組んでいる韓国の自由先進党の朴宣映(パク・ソンヨン)議員が07年に脱北して韓国入りしていた国軍捕虜の息子リ・ヨンス氏(仮名、46)から「横田めぐみさんは生きている」との「証言」を聞きだし、公開していた。

 証言によると、リ氏は04年末から05年初めごろ、朝鮮労働党の日本担当者と会食する機会があり、めぐみさんについて「知ってはいけないことを多く知りすぎたため、帰したくても帰せない。実は生きている。遺骨は偽物を送った」との話を聞いたとのことだ。

 「死亡確認書」のとおり、めぐみさんが「2004年12月14日にうつ病で死亡」しているなら「めぐみさんは2004年末か05年初めには生きている。知ってはならないことをあまりにも多く知っているため、帰国させられなかった」という話も作り話となる。

 崔代表の今回の発言を伝えた日本の某紙は2004年12月に死亡したのが事実なら「遺骨引き渡し(2004年11月)後に『死亡』したことになり、めぐみさんの安否に関する北朝鮮の主張の信用性がさらに落ちたといえそうだ」と書いていたが、信用性を問わなくてはならないのは、検証もせず垂れ流しする「韓国情報」ではないだろうか。