2008年1月8日(火)

週刊現代の「スクープ記事」

 週刊現代が最新号(1月19日号)で「モスクワ発スクープ!!横田めぐみさんは生きている!」との大見出しの記事を掲載していた。見出しに「?」が付いていないことから記事にはよほど自信があるのだろう。ネタ元は「ロシア外交当局幹部」となっていた。

 「ロシア発」は過去に「前科」がある。以前に「平壌駐在の外交官の話として平壌で開かれた外交官が集まる宴会で横田めぐみさんらしき女性を見た。人民保安省(警察)の幹部らしき夫と一緒だった」との「西側外交官の目撃情報」をロシア人記者が日本のメディアに流したことがあった。もちろん、ガセネタであった。

 また、2005年にもロシアのイタル・タス通信が「10月に労働党創建60周年に合わせて党大会が開催され、後継者が選出される」との断定情報を「平壌の外交筋の話」として流していたが、これも結局は誤報だった。 今回の週刊現代にはロシア外交当局幹部の証言がそのまま掲載されていた。

 ロシア当局は「01年に続き、このほど(07年)、2度目の本格的な日本人拉致被害者の実態調査を、北朝鮮国内で敢行した」結果、「横田めぐみさんの存命率を85%と結論付けた」としている。記事の表題には「横田めぐみは確実に生きている」としているのに100%でなく、85%というのはどういうことなのか。

 「北朝鮮という狭い国土に住む外国人(日本人拉致被害者)の安否を確かめることなど、それほど困難ではない」と言うならば、どうしてめぐみさん以外の日本人拉致被害者に関する言及はないのだろうか。 

 めぐみさんは01年以降、「新たな名前」と身分証明書を与えられ、「平壌から地方に移住させられた」と断定しているが、伏せる必要もないのに「新たな名前」も「移住させられた地方」も特定されていないのも不思議だ。

 帰国させず隔離した理由については「最も深く北朝鮮の中枢機密に関わっていたため彼女が日本に帰国したら、北朝鮮の対日工作の全貌が日本側に漏洩するので絶対に帰国させるわけにはいかない」としているが、その一方で日本人拉致に関わった北朝鮮当局の一部から「横田めぐみの日本引き渡しを日本との国交正常化の切り札にしようという動きが出ている」と全く「矛盾」したことを言っているのは解せない。

 ロシア政府の「安否調査」がこの「証言者」が言うように「めぐみさんの安否情報が、日朝国交正常化に直結し、日朝国交正常化はロシアの極東における国益に直結する」ならば、その調査結果を週刊誌の記者には伝え、日本政府に今日まで伝達しない理由がどうにも理解できない。

 それでも、記事の最後に横田滋さんの「今回のロシア政府からの貴重な情報は、大変ありがたい」とのコメントが掲載されていたが、横田夫妻にはこの匿名の証言者が誰なのかを含めてより詳細な情報が提供されたのだろうか。今後の情報の推移を注目したい。