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衆議院拉致問題特別委員会(2005年2月24日)


 拉致問題との関連で経済制裁を発動するかどうかについて2005年2月24日、「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」では審議を行った。以下審議内容を掲載する(肩書は当時)

△菅義偉議員(自民党)


 −−経済制裁は段々と現実視されてきている。日本にとっては初めてのことだが、政府内では当然組織の対応というものを考えていると思うが、その手順について聞きたい。

 細田官房長官:政府としては当然、生存者を直ちに帰国させるよう、そしてすべてについて実態を明らかにするように引き続き交渉していくつもりだ。今日のように引き続き誠意のない対応に先方が終始する場合には厳しい対応を取らざるを得ないとの覚悟で交渉をしている。衆参両院ではさまざまな対応の立法もしているが、その立法に基づいて、法令によって、あるいは政省令や通達令によってどのような措置がどのように取れるのかということは法令別に十分検討している。まずは対話と圧力の中の圧力を持ちつつ対話をするという基本方針で、厳しい考え方で対応しているところだ。

 町村外相:組織的に政府でどのような対応を考えているかについては、内閣官房を中心として関係する省庁は多岐にわたっている。経済産業省や財務省、あるいは国土交通省、法務省、そういうそれぞれのところに別に組織を新しくつくったわけではないが、有機的なチ−ムプレ−をできるようなことで既にいろいろな検討が始まっている。

 −−自民党の拉致対策本部、その中に経済制裁のシミュレ−ションチ−ムがある。私はその責任者をしているが、拉致問題を解決するには、金正日という独裁者を取り巻く特権階級と言われる軍の幹部や党の幹部に実害を与える経済制裁を科さなければ、拉致問題は進まない。今までの対話中心から圧力へと方向転換を図る時期に来ているのでは?

 町村外相:対話と圧力の基本的な考え方は変わらない。ある種の圧力に実になっている面もある。その圧力をどういう形で今後発動していくのかいろいろなことを慎重に考え、タイミング、方法、先方のそういう指導的な立場にある人達に影響を与える方法が有効的ではとの指摘も受け止めている。現在は、6か国協議が再開されるかどうか微妙な時期にある。そういうことも考えて、きちんとした正しい解決ができるような手段というものを選択していく。

△西村康稔議員(自民党)


 −−北朝鮮産のアサリの表示問題だが、北朝鮮で1年ぐらいで育ったアサリを日本に持ってきて1週間ぐらい日本の海にまいても、北朝鮮産と表示しなければならない。すでに調査を要請しているが、調査結果について農林水産省に聞きたい。

 高橋直人大臣官房審議官:1月15日から31日にかけて地方農政局などでアサリの原産地表示の根拠の確認調査を行った。1月末までの調査結果では、小売段階では、これは全体で650の小売店と、74事業所(中間流業者)があるが、小売段階で原産地表示の欠落などの不適正表示があった事例が19件確認されている。すでに厳正に指導を行った。それと、原産地表示をしていたが、その根拠がなかった事例が16件確認されている。これら事例についてはその発生の原因も含めて確認調査を行うとともにその仕入れ先などにさかのぼって事実関係の確認作業を実施しているところである。さらに不適正表示などが確認されなかったケ−スについても小売店の仕入れ先である卸売業者にさかのぼり必要な調査を行っているところだ。この調査については2月に入ってもなお継続中である。

 −−ベニズワイガニあたりは、仮に輸入を規制しても、結局韓国や他の国で缶詰にして日本に持ってくることになれば、単に日本国内の水産加工業者の仕事を奪って、海外にその仕事を与えてしまう結果になりかねない。その点、アサリはむき身にして製品加工にして持ってくるというニ−ズは少ないと思う。また、衣料品についても材料を止めれば向こうで製品加工ができなくなるので、相当数の雇用を失わせる効果もあるし、混乱を引き起こす一つの大きな要因になるのではと思う。このあたりどのような分析をしているのか。

 武本敏彦水産庁漁政部長:我が国への輸入金額であるが、アサリが大体40億円、3万トン強。ベニズワイガニが14億円、大体1千7百トン、これらについては、全体の我が国の水産加工業で使っている魚の量が6百万トンぐらいあるので、積み上げても大体5万トンぐらいしかならない。オ−ルジャパンペ−スでみると、もちろんそれほど大きな影響があるという数字ではない。ただ、日本海側の一部の地域に集中して水揚げされているという商品がある。アサリについては下関に大体80%が水揚げされている。それからベニズワイガニは100%境港市に水揚げされている。そうした特定地域に限れば、相当な関連産業への影響が生じる。農林水産省としては関連の都道府県あるいは地元の団体の方々とも十分意見交換しながら適切な対応をしていきたい。

 −−衣料品についてはどうか?

 中嶋誠経済産業省貿易経済協力局長:昨年1年間でメンズス−ツなどの衣類あるいはその付属品の北朝鮮からの輸入額が28億円になる。北朝鮮からの輸入総額が176億円だから、その約16%占めている。かなり大きい。方や日本からの繊維の輸出だが、約16億円で、そのうちある一定部分は委託加工をしてまた日本に戻ってくるのがあるが、詳細はわからない。なお、日本からの輸出品について一番多いのが中古自動車、これは過半がトラックで約30億円。北朝鮮への輸出総額96億円のうち31%を占めている。

 −−貿易を止めること自体も大変なことだが、それ以外の手法として銀行からの送金あるいはお金を持って入る携帯輸出、これを止めることも一つの経済制裁の手法だ。銀行送金あるいは携帯輸出、日本から北朝鮮にどの程度のお金が渡っているのか、知りたい。

 井戸清人財務省国際局長:報告のあった平成15年度の北朝鮮向け送金は1億百万円。平成16年度は12月末まで9千2百万円。現金の持ち出しは100万円相応額を超えるものは財務大臣への届け出義務の太陽となっているが、平成15年度に届け出のあった北朝鮮への現金などの持ち出しは25億7千6百万円、平成16年度は21億7百万円となっている。

△渡辺周議員(民主党)


 −−大変やっかいな問題がある。6月8日に平壌で開かれるワ−ルドカップアジア最終予選のアウエ−戦である。平壌での試合は過去3回あった。79年8月と85年4月、89年6月で、後の2回がワ−ルドカップ予選だ。当時サポ−タ−らは行かなかった。今回は2千〜5千人のサポ−タ−を北朝鮮は受け入れると言っていた。この件についての外務大臣の考えは?

 町村外相:国交のない国に何千人は前例がない。どう対応するかいろいろ考えなくてはならない。先日別の委員会で、ある委員からは、サッカ−の試合に行かなければいい、これはある種の制裁である、モスクワオリンピックの前例もあるとあっと驚く提案を受け、しばらく考え込んでしまったが、やはり、スポ−ツはスポ−ツ、外交は外交と考えたほうがいい。多くのサポ−タ−らが行ける方向で準備していく必要がある。

 −−経済制裁を期限を切ってやるべきだということには大勢の国民が賛同している。そんなに割り切れるのか。3泊4日で25万円の費用だ。そんなには行かないとは思うが、上限5千人とすると、片方で経済制裁の論議をしているが、片方で外貨獲得のチャンスを北朝鮮に与えてしまう。行かせないのも、一つの経済制裁かもしれないが、国際的に見て当然ホ−ムでやったわけだから、今度はアウエ−でやらなければいけない。邦人の保護をどうするつもりか?

 町村外相:先方が受け入れるという前提で物事を考えていかなければならない。何しろ、外交、領事関係を有していないところで何らかの領事事務を行うということが、まず法律的にどこまで可能なのかどうか。国交関係がない国とはいえ、外交ル−トで話し合ってどこか、北朝鮮の大きなホテルの一室を借りて、そこに外務省の省員が行って、正規の領事業務ではないけど、それに類するようなことをやる必要があるのかもしれない。もちろん事前に北朝鮮側と今度は調整しないといけない。しかし、その相手と今こちらでは制裁の話が盛り上がっている時に果してそういう冷静な話し合いまで立ち入ることができるかどうか。非常に不確定な面が多々ある。

 −−移動の自由が憲法にもうたわれており、どうしても行きたいという人間に対してあの国に行ってはならないというのは難しい。行くときは当然のこといろいろなことを想定して行ってもらう。先方はある程度判断を柔軟にできる相手なのか。現地に行ってすり合わせて来たようだが、その辺について詳しく聞きたい。

 素川富司文部科学省スポ−ツ局長:2月16〜19日にかけて日本サッカ−協会の職員2名が北朝鮮を訪問し、先方と協議した。その結果、北朝鮮側からサポ−タ−の受け入れが可能であること、報道陣については記者100名、カメラマン50名の受け入れを確認した。選手団のホテルについてはコック帯同可能な2か所のホテルを提示したようだ。話は友好的に行われたと聞いている。サポ−タ−については小倉副会長はフライトの関係もあり、2千名程度になるのでとの考えを示していた。

 −−ビザについては?

 鹿取克章外務省領事局長:基本的には旅行会社が代理で申請するということになる。これもまたいろいろな協議の過程を見守っていきたい。

 −−行くにあたっての条件をさんざん付けられる、そして、言ったら、彼らの都合のいいようなことに従わなければならないという場合は、やはり日本としては毅然とした態度でなければならない。外務省としてはサポ−タ−にも注意喚起しておくべきだ。

 逢沢一郎外務副大臣:北朝鮮に結果的として政治利用されることのないよう条件整備、状況の確保をきっちりやらなくてはならない。そういう形で6月8日を迎えたいと思っている。◆