「北京大使館を通じて交渉を求めている」
衆議院拉致問題特別委員会(2008年12月17日)


 政府答弁者:中曽根外務大臣、伊藤外務副大臣、河村官房長官、齋木外務省アジア太平洋局長

 
△小杉隆議員(自民党)
 

 ――今回の六者会合は、北朝鮮の核計画を検証するためのサンプル調査、サンプル採取を明文化することが最大の焦点でありましたが、結果として何らの進展がないまま閉幕したことは大変残念であります。しかも、その場で日朝協議もできなかったということは、本当に残念であります。今回の六者会合をどのように政府は評価しておられるか、中曽根外務大臣の答弁を求めます。

 中曽根外相:今般の六者会合は十二月八日に北京で行われたわけでありますが、この首席代表者会合では、一つは検証について、それからもう一つは、無能力化と経済・エネルギー支援の取り進め方、そして三つ目は、北東アジアの平和及び安全に関する指針に関する議論が行われたわけでございます。我が方といたしましては、しっかりとした検証の具体的枠組みを六者間で文書で確認するということ、これが非常に重要であるという立場から今回の会合に臨みました。検証につきましては、全体会合やバイ協議などにおいて、長時間にわたり意見交換が行われましたけれども、検証についての大枠の考え方や取り進め方について、北朝鮮の考え方と、我が国を含む各国の考え方の違いが埋まらずに、結局合意に至ることができませんでした。

 ――先週開かれた日中韓首脳会談について伺いたいと思います。拉致問題については、必ずしも三カ国の足並みがそろっているとは言えないという懸念があります。韓国の李明博大統領は、拉致被害者家族や日本国民の心情をだれよりも理解していると発言したのに対し、中国の温家宝首相は、麻生総理の、六者会合の議長国である中国の役割を期待するとの発言に対し、返答しなかったという報道もあります。外務省の報告にも、たしかそのようなニュアンスであったと思います。中国は拉致問題に対しやや冷淡という印象を受けますが、実際にこの会談においてどういうやりとりがあったのか、説明をいただきたいと思います。

 齋木局長:日中の首脳会談、これは温家宝総理との首脳会談でございましたけれども、この会談におきましても、麻生総理の方から、今回、六者会合がうまくいかなかったことは残念である、日本としては拉致問題、核問題ともに極めて重要な問題である、六者会合の議長国である中国の引き続きの御尽力を期待していますという趣旨のことを発言されました。いずれにしましても、政府といたしましては、この拉致問題の解決、当然のことながら、アメリカ、韓国、中国等々と連携して取り組んでまいる考えでございます。

 ――今の御答弁でも、中国からはっきりした協力的な発言があったとは受け取れないんですが、それはここで終わります。次に、私は、一つの状況として、ロシアとの協力だと思うんですね。ロシアは、我が国とか米国とともに、北朝鮮に対して厳格な検証体制を求める姿勢をとった。また、ことしの十一月五日の日ロ外相会談におきまして、ロシアのラブロフ外務大臣が、拉致問題については引き続き我々のチャンネルを通じて働きかけていく用意がある旨述べたということであります。このようなロシアの姿勢は我が国として歓迎すべきことであり、今後、ロシアとの協力、特に拉致問題について強化すべきと思いますけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

 伊藤外務副大臣:今般の六者会合の首席代表者会合に際し、ロシアも、我が国同様、しっかりとした検証の具体的枠組みが重要との立場から会合に臨んでいたと承知しております。また、同会合の際行われた日ロのバイ協議の場においても、ロシアからは、拉致問題に同情しており、拉致問題の解決に向けた日朝間の対話を促進したいとの立場が表明されました。今委員御指摘のとおり、本年十一月の日ロ外相会談においても、中曽根外務大臣とラブロフ外相との間で、拉致問題に関する協力というものを確認しているところでございます。

 ――次に、米国との関係です。我が国は、拉致問題が進展しない場合には、米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除、望ましくないという立場をとってきましたけれども、米国は、十月、米朝協議において検証措置についての合意が得られたとして、テロ支援国家指定を解除しました。これは十月十一日のことです。しかし、今回の六者会合では、十月の米朝協議で合意されたはずの検証措置を明文化することができなかった。結果的に、テロ支援国家指定を解除したにもかかわらず、何も得ることがなかったという状況になったわけです。大統領の任期内に何とか成果を得ようとしたブッシュ政権の焦りが北朝鮮につけ込むすきを与えたと言わざるを得ません。
 来年一月二十日からオバマ政権が発足しますが、我が国として、日米関係にそごが生じないように、できるだけ早い時期に、オバマ政権との間で、北朝鮮に対する姿勢について方針を確認しておくべきではないかと思います。

 中曽根外相:オバマ次期大統領は、拉致問題につきましては、拉致問題に関するすべての問題を解決しなければならない、全面的な協力を北朝鮮に強く求めるとの立場をこれまでも明らかにしております。オバマ次期大統領は、十月の十一日に、北朝鮮のテロ支援国家指定解除に関する声明というものを発表しておられるわけでありますが、その中で、拉致に関しましては、今後北朝鮮は、日本人並びに韓国人、そして金東植牧師の拉致に関するすべての問題を解決しなければならない、こういうふうに述べておられまして、金東植牧師というのは、御家族が、オバマ次期大統領の地元でありますイリノイ州にお住まいということで、大統領も、この牧師の問題、また拉致問題全体についても大変関心を持っておられるというふうに私は承知をいたしております。

 ――第二の質問ですが、我が国自身の取り組みについて伺いたいと思います。 先日、先ほど述べたように、全くこちらの要求にも耳をかさずに、日朝会談ができなかった。今の北朝鮮の姿勢では、これまでのやり方で果たして事態が進展させられるのか。先ほどお二人の大臣から言われたように、やはり対話と圧力という基本方針の中で、従来、ともすると経済制裁の方にウエートがかかって、対話という点では努力が足りなかったのではないか、私はそう思わざるを得ないわけであります。今、さらなる圧力として追加的な経済制裁ということも検討していると聞いていますけれども、今後の政府の取り組み方針を伺いたいと思います。

 河村官房長官:対話と圧力の姿勢を堅持しながら、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ないんだという強い姿勢でこれまでも取り組んできたところでございます。こうした取り組みの結果が、八月の日朝実務者協議において、北朝鮮は、拉致問題の解決に向けた具体的な行動をとるために、いわゆる生存者を発見し日本に帰させるための拉致被害者に関する全面的な調査を約束したわけであります。しかし、ここに至って、残念ながら、いまだ調査を開始していないという現状が生まれております。
 政府としても、御指摘のとおり、すべての拉致被害者を一刻も早く取り戻すべく、今後とも、アメリカを初めとする関係国との緊密な連携協力の中で、北朝鮮に対して、八月の日朝間の合意に従って早期に全面的な調査を開始するように引き続き強く求めていく考えでございます。

 ――暗礁に乗り上げている日朝間、これは先ほどからいろいろお言葉がありましたけれども、やはり、ミサイルとか核の問題はマルチの問題、それから拉致の問題はバイの問題なんですよね。だから、これを全部ごちゃまぜにするのではなくて、日朝間のこの拉致問題というのは、やはり我々が主体性を持ってやっていかなきゃいけないと思うんです。関係国がみんな協力してくれるというのは非常に好ましいことですけれども。そういうことで、私は、この際、例えば、もうちょっと多角的な取り組みが必要じゃないか。かつて中国との間ではピンポン外交なんということを言われました。北朝鮮との間でもやはり、平山郁夫さんが文化の面で貢献しておられますし、またスポーツなんかもサッカーの交流とか、あるいは学者の交流とか実業界の人たちの交流とか、そして政治家の交流、こういうあらゆるレベルの交流ということが必要だと思うんです。議員外交というと、どうも金丸訪朝団の悪いイメージが残っていて、悪であるかのような印象を受けますけれども、私どもGLOBEという地球環境国際議員連盟の活動とか、あるいはWTOにおける農林関係議員の活躍とか、そういうことを見ますと、今や、外交問題は外務省の専管であるなんというような発想ではなくて、もうちょっといろいろな人の協力を得るという姿勢が必要だと思うんですが、この点についてだけ一つ、河村大臣、今後の決意を聞かせていただきたいと思います。

 河村官房長官:今この問題は、世界各国、世界じゅうの御理解をいただくと同時に、我が国でやはり独自の方法をこれから考えていかなきゃいかぬ、特にバイの協議を進めていかなきゃいかぬ、その手だてをどうするかという問題だろうと思います。これはまさに多角的に、包括的に、いろいろな角度から情報をとり、対応していかなきゃいかぬ、このように思っておりまして、そういう意味で、政府としては、しかし、総理を本部長として、まさにチームワークをしっかり持って対応していかなきゃならぬ、こういうふうに考えておるところでございます。ただ、残念ながら、国交を持っておりません。そういう意味で、大使館もない。そういう点は、国交を持っている国々の情報もしっかりいただきながら、まさに今の状況はなかなか容易ならざる状況でございますが、しかし、六者協議の舞台にのせて、門戸を開かせながら、その中を我々として進んでいくという方針、これは全体の方針でありますから、この中で日本はどうとるべきかということをこれからしっかり考えていきたい、このように思っております。

 
△鷲尾英一郎議員(民主党)


 ――八月の日朝の実務者協議で、北朝鮮の拉致被害者の再調査委員会の立ち上げが北朝鮮側と日本側で合意があった。早ければ秋までには、拉致被害者の再調査、今までの経過にかかわらずゼロベースでの調査を行うということに合意したという話であったと思いますが、それが秋までには成果が見えるはずだったわけですけれども、九月一日に福田前総理が辞意表明後、北朝鮮側から延期の通告が九月四日にあったということであります。九月の四日の北朝鮮側の通告を受けたというのは、北朝鮮側の、具体的にどこから通告を受けたということになっているんでしょうか。

 齋木局長:九月四日の夕刻か夜だったと思いますけれども、北朝鮮側からは、北京にあります先方の大使館から、同じく北京にあります日本大使館に対してそういう連絡があったと記憶しております。

 ――日朝国交正常化の北朝鮮側の大使であります宋日昊さんが、九月の十一日の時点で、結局その合意が、北朝鮮側として、麻生政権になってしっかりと履行される保証がないからそういう通告をしたんだという経緯の説明と、それともう一つは、八月の実務者協議において、拉致被害者についての全面的な再調査を約束したことについては、理解できないという発言もあわせてしたと聞いております。この宋日昊さんの発言というのが日朝の実務者協議の結果についてどれだけの影響があるのかというところを疑問に思ったものですから、その点についてもお答えいただきたいと思います。

 齋木局長:八月に行われました日朝実務者協議、双方でいろいろと議論をいたしまして、一定の合意、了解に達して、それをお互いに実行していくということで終わったわけでございます。宋日昊大使が私の相方として先方から代表でおりましたけれども、その後、宋日昊大使が公の場で、日朝のその合意について、これを否定したり批判したりしたということは私は承知しておりません。

 ――では、この日朝間の実務者協議の内容というのは、拉致被害者の全面的な調査、今までの、横田めぐみさんの遺骨偽造事案とかいろいろありますけれども、そういうものをすべて含めてゼロベースで調査されるということ、これは、先ほど大臣の北朝鮮情勢に関する報告にもありましたけれども、北朝鮮が調査委員会を立ち上げてということを求めていくんだという話をしておりましたけれども、この調査委員会を立ち上げて調査をするという内容については、全面的にゼロベースで調査するということは間違いないということでよろしいですか。

 齋木局長:先方は調査を行う、それは、拉致問題の解決に向けた具体的な行動をとるため、すなわち、生存者を発見して帰国させるための拉致被害者に関する全面的な調査をするということを向こうは約束したわけでございます。かつ、権限が与えられた北朝鮮側調査委員会によって迅速に行うということも約束しておるわけでございます。したがって、ゼロベースとおっしゃいましたけれども、まさに調査のやり直し、再調査ではなくてやり直しというところを双方で合意したわけでございます。

 ――北朝鮮側からの通告が大事であると今局長から答弁いただきましたけれども、北朝鮮側の通告をいかにさせるかということが、日本側としてはこれはもう最重要だと思うのですが、北朝鮮側の通告を何とかさせるために日本としてとり得べき措置というのはないのかと思うわけです。 どんな政策を今考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 齋木局長:まず一義的には、我々は、繰り返し北朝鮮に対して、約束を早く履行するようにということを北京の大使館のルートを通じてやってきております。また、このような状況がずっと続いておりますということにつきましては、六カ国協議のほかの参加の国々、アメリカはもちろんでございますけれども、韓国、ロシア、中国に対しても我々はずっと説明してきておりまして、こういう六カ国の中で、二国間、つまり日朝の間で物事が全く動いていない、対話すら行われていない、こういう極めて異常な状況についてやはり六者としても問題にすべきである、それはぜひ各国から北朝鮮に対してもしっかりと働きかけてもらいたいということは、私は何度も繰り返しそれぞれの参加国に対して要請しております。

 ――北朝鮮が申告した核計画、これにはプルトニウムが三十八キログラム含まれているというふうに聞いております。これですと大体どれぐらいの核兵器なのかな、八発から九発くらいの核兵器を開発できるぐらいのプルトニウムの量だと聞いておりますが、この核計画をしっかりと、我々としては、北朝鮮の非核化ということを考えたときに、本当に完全に明確に、明らかにしなければいけない。自己申告でよしとするのは余りにも危険であるというふうに考えております。だからこそサンプル採取自体が今回の六者協議でも問題になったと認識しております。六者協議で今問題となっているサンプル採取ですが、これは検証方法としてどういう意味を持っているのかということが一点と、もう一つは、検証の対象となる施設が北朝鮮からの自己申告でいいかどうかについてお答えをいただきたいと思います。

 齋木局長:本来であれば、IAEAの専門家たちが検証を実際に実施するということで、そういう意味での非常な知識と経験、また機材も含めて持っているわけでございます。これを、北朝鮮の核の開発計画で申告されておりますすべての施設、または申告されていない施設も含めてやるということが完全な意味での検証ということになると思います。今はまだその段階に至っていないわけでございまして、北朝鮮が、NPTから自分たちはもう脱退したとか、IAEAとはもう関係ないんだというようなことを言っております中で、IAEAがいきなり乗り込んでいってこれをやるというのはできない。そうしましたら、六カ国の中でこの検証を当面やっていくということになると思います。 

 ――日本にとって極めて核の問題というのは危険な問題であると思っております。 では、今局長がおっしゃっていたサンプルの採取ですけれども、今、米朝の内容を文書化するということをお話ししていると思いますが、それにはサンプル採取は含まれていないわけですね。サンプル採取をしっかりと文書化するということが非常に日本にとって重要である、局長の話からもそう思うわけですが、そのサンプル採取を文書化するまで日本としては米朝の協議内容について認めないという姿勢が大事だと思われますが、この点について外務省さんはどうお考えでしょうか。

 齋木局長:米朝間で、十月の二日か三日でございましたか、交渉の結果、一定の合意に達した、その中で、文書によって合意に達したものもあれば、口頭において了解し合ったものもあるということで終わったわけでございますけれども、これはあくまでも米朝間の話でございます。我々は、むしろ六者としての検証の枠組みをきっちりつくらなきゃいけない。米朝間で合意ができたことについては、それをいわばベースとして、そこからさらに六者として納得のいく、そういうものをつくらなきゃいけないと。

 
△高山智司議員(民主党)


 ――小泉政権のときに随分拉致問題は大きく進展がありましたけれども、安倍政権、福田政権そして麻生政権と、どんどんトーンダウンをしてきているような、そしてまた問題が風化してきていると言うような人までいます。この間の十二月の十二日に家族会によりますシンポジウムがありました。これは家族会の方が開いたシンポジウムではございますけれども、政府側から、例えば中山恭子補佐官とか、どういう方が参加されたのか教えてください。これは官房長官に伺います。

 河村官房長官:拉致問題対策本部事務局は、南情報室長それから総合調整企画官、参事官補が出席いたしておりまして、私それから中山補佐官、関係者、その報告はこれまでも受けてきておるところでございます。

 ――やはりこういう大きい家族会の大会とかに官房長官や中山補佐官、しかも中山補佐官は専従ですから、まさにそういった問題にはきちんと公務として参加をしていただきたいなというふうに思います。次の質問に移りたいと思うんですけれども、北朝鮮による拉致の再調査委員会の見送りを北の側から通告してきたということですが、これは、どういうことで九月上旬にそういう通告が来たのかも教えてください。これは外務省にお願いします。

 齋木局長:本来八月の中旬に合意した話でございましたけれども、今にも調査委員会を立ち上げて調査を開始するのかなと思っておりましたところが、九月の四日の夜になりまして、北朝鮮側から連絡が参りまして、日本側の新しい内閣が北朝鮮側に対するどういう政策、方針をとるかということも含めて、しばらく、その辺がわかるまで、見きわめるまで調査の開始を見合わせる、そういう連絡がございました。

 ――私、今ここに持っています高村外務大臣の会見録、九月五日というのがありますけれども、北朝鮮の側から、突然日本で政権交代が行われるようになった日本側の事情にかんがみて通告があったというような会見を高村外務大臣がされているわけなんです。私だけではなくて日本国民全体的にじくじたる思いだと思うんです。政治の空白をつくってしまったがために相手につけ入るすきを与えてしまい、また、やっと実務段階へ進もうとしたところを何かまた話が引き戻されてしまった、この責任についてどのようにお考えか、答弁をお願いします。

 河村官房長官:麻生内閣におきましてもこの問題についてはさまざまな表明をしてきておるところでありますけれども、もちろん、こういう事態になっていることは我々も残念に思っておるわけでありますが、この問題は、まさに六者協議の中において、拉致、核、ミサイルといった諸案件を効果的に解決することによって、そして不幸な過去を清算して国交正常化を図っていきたい、このことを強く求めておるわけでありまして、日朝実務者協議の合意内容というもの、これを強く求めていく、この方針に全く変わりはないわけでございます。特に北京の大使館ルート、これは国交がございませんから北京の大使館ルートを通じて北朝鮮側にも強く求めておるわけでございまして、我々としては、残念ながらこのような状況になっているということ、これをいかに取り戻すかというのは次の麻生内閣にかけられた大きな使命である、このような思いで取り組んでおるわけでございます。

 中曽根外相:確かに、福田総理が退陣されまして、総裁選等も行われたわけであります。そういう意味では政治的な変更があったわけでありますけれども、その後誕生いたしました麻生内閣におきまして、麻生総理は、最初の所信表明演説におきまして、この北朝鮮への対応というものをしっかりと述べておられます。北朝鮮に対しましては、一刻も早くこの調査のやり直しを約束どおりやってほしい、そうすれば我々も日朝実務者協議に応じた対応をいたしますということを、メッセージはたびたび発信をしてきております。

 ――これは十二月に入ってからの記事なんですけれども、何か、宋日昊という北朝鮮の大使が連絡不能にとか連絡がとれないとかいう記事が結構散見されるんです。まず、この方は、日朝のまさに実務者協議でカウンターパートとして随分連絡をとっていた方だと思うんですけれども、これは大臣でも構いませんし、実務レベルの話ですので事務方でも構わないんですけれども、この宋さんと最近連絡はとれているんでしょうか。また、とれているんだとすれば、最後に連絡をとったのはいつですか。

 齋木局長:宋日昊日朝国交正常化担当大使ということで、私の相方として今まで実務者協議に出てきておりまして、私が最後にこの人物と会ったのは、本年の八月の十一、十二日の実務者協議のときが最後であります。その後、本人との連絡というのは私はとっておりません。 また、北朝鮮との連絡というのは、個人としての宋日昊と連絡をとるということではなくて、これはやはり、窓口として、我々は北京の日本大使館、または北京にある北朝鮮大使館との間でやりとりをして、北朝鮮としての意思表示というものを我々に対して伝えてきて、そういうやりとりをしております。

 
△渡辺周議員(民主党)
 

 ――最新号のフォーリン・アフェアーズという外交、安全保障の専門誌に、ゲーツ国防長官が、核爆弾製造ということを指摘した論文を投稿しております。米国の幹部が既成事実としてこのような形で投稿したのは初めてだということでございます。核兵器をもう製造している、そして、核開発疑惑なんというレベルではなくて、もう核兵器を持っているのではないか。これが、オバマ政権に引き続き移行して、ゲーツ国防長官が留任するわけでありますけれども、この点について、オバマ政権においての戦略の中で、これは、北朝鮮がもう核兵器を保有しているということを前提に外交交渉を始めるのではないかという一つの布石ではないかという見方もありますが、日本政府は、この現状についてどのように御認識をされていますか。

 中曽根外相:これの報道については承知をしておりますけれども、我が国といたしまして、北朝鮮の核開発関連のいろいろな動向につきましては、当然のことながら、日ごろから情報の収集あるいは分析に努めておるわけでございます。今の御質問の点も含めまして、個々の情報の内容についてはやはり、先ほどからインテリジェンス、インテリジェンスということで大変恐縮でありますが、これはそれにかかわることでございますので、日本政府がどの程度の、北朝鮮の、核のいろいろなものについて有している等について申し上げることは、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ――私、先日、三日ほど前に、アメリカの元CIAのアジア局長でありましたアーサー・ブラウンさんという方とお会いをしました。アーサー・ブラウンさんが、拉致の解決の問題で私はアピールに来たんだということで来られて、二十人ほどの会で、私も話を聞きましたけれども、とにかく、オルブライト、ヒラリーグループというのは北朝鮮に対して大変融和的だ、クリントン政権がやり残したことは北朝鮮訪問であった。事実、オルブライト国務長官は、二〇〇〇年の十月に、趙明録という国防委員会の副委員長と、交互に平壌とワシントンを相互訪問しているわけですね。そして、金正日ともワインを酌み交わし、その場で、金正日は大変友好な人であるというようなことを言って、非常に融和的な政策をとろうとした人間でございます。あと任期がもう少しあったら、米朝はお互いの連絡事務所を持って、米朝が本当に大接近したのではないかというふうなことまで言われたわけでございます。このアーサー・ブラウンさんが言っていました、とにかくオバマの耳に拉致被害者の声を直接届けるべきだと。このクリントン、オルブライトの外交戦略からいくと、米朝は急接近をまたする、クリントン政権の宿題を果たすために。そうしますと、ヒラリー・クリントンは、拉致の問題についてどこまで知っているんだろうか。先ほどもややお話ありましたけれども、オバマ上院議員時代には若干拉致問題のことについては言及をしておりますけれども、ヒラリー・クリントンは、日本の拉致問題については全く一言も触れていない。大体、日本のことについてもこれまで二言しか触れていない。できれば拉致被害者の御家族の方とまた一緒にアメリカに行って、やはりそれは外交努力の中で、直接拉致被害者の声をオバマに伝える、オバマ次期大統領もしくはオバマ氏の政権移行チームに伝えるという努力はまずはすべきだと思いますけれども、その点についてお考えはありませんか。

 中曽根外相:オバマ次期大統領や、それからクリントン次期国務長官を初めとする新しい政権の関係者も、私は、この拉致問題、日本と北朝鮮の問題をよく理解しているものと考えております。特に、オバマ次期大統領は、十月の一日でしたか、北朝鮮のテロ支援国家指定解除に関する声明というものが、オバマ上院議員による声明があるわけでございますが、そこの中で、北朝鮮は日本人並びに韓国人、そして金東植牧師の拉致に関するすべての問題を解決しなければならないということで、この御家族がオバマ氏の地元であるイリノイ州に住んでいるということもありまして、拉致の問題等には大変関心があり、理解があるわけでございます。そういうことで、全面的な協力を北朝鮮に強く求める、そういうような立場も明らかにしていると承知をしております。

 ――李明博政権になって、これまでの盧武鉉政権と違って、随分韓国の、拉致に対する、あるいは脱北者政策に対する姿勢が変わってきた。さまざまな問題があって、開城の工業団地の閉鎖ですとかあるいは南北の鉄道の中断が、今いろいろ起きているわけでありますが、それだけ北朝鮮の中枢にかなりの打撃を与えているんだろうと思います。そこで、一つ伺いたいんですけれども、李明博政権になって、拉致問題に協力するという韓国の姿勢はいかがか。

 伊藤外務副大臣:李明博政権のことについてだけ私の方からお答えします。本年三月に李明博政権は、北朝鮮の人権問題等に関して、韓国人拉致問題及び国軍捕虜問題について、自国民保護は国家の基本責務であるという観点から、最優先課題として推進する旨の方針を明らかにしたところでございます。李明博大統領のこのような方針は、その後も韓国の国会の施政方針演説等でも明らかにされてきているところでございます。また、十二月十三日に行われた日韓首脳会談では、麻生総理より、日本には拉致問題があり、この面でも韓国と協力していきたい旨を述べたのに対し、李明博大統領も同意しつつ、拉致被害者の御家族や日本国民の心情をだれよりも理解しているとの発言がございました。我が国としては、このような李明博大統領の姿勢を心強く感じております。今後とも、日韓が協力して解決したいと思います。

 ――私たちとしては、半年間延長された、ことし十月に切れた経済制裁の延長、さらに追加経済制裁をするべきじゃないかということで、我が党の中でも今議論をしております。与党の中でもそのような形で議論をされていると理解しております。例えば、北朝鮮に対して、今はぜいたく品と言われる二十四品目の輸出禁止をしておりますが、全輸出を禁止する、全面禁止をする。 専門家に聞きましたら、金正日が地方に行くときに、日本のカップめんを段ボール一箱持っていって、それを兵士の食料としてあてがって忠誠を誓わせていると。日本ではカップラーメンは奢侈品、ぜいたく品ではないけれども、北朝鮮の本当に地方にいる兵士にしてみるとこれは大変なごちそうなんだという中で、日本製のカップめんだってこれは一つの戦略物資でありますから、私は、例えば全面禁止をするべきではないかというようなことも織り込んで今党内で検討しておりますが、日本政府として、今後、この不誠実な態度を見て、さらなる新たな経済制裁、制裁をするということは検討しているのかどうか。官房長官、いかがですか。

 河村官房長官:ふだんから北朝鮮への措置を検討しているわけでございます。六者協議の一件も見守っていたわけでありまして、局面も変わってきた。ただ、アメリカの、先ほど来御指摘のような新政権の動きもこれありでありまして、こういう問題も、国際的な動向を見きわめながら、今の追加措置等もその中に含めた形で総合的にやはり考えていかなきゃいかぬ、このように思っております。

 ――これは政令を改正しなければできない部分もありますので、議員立法だけではできない部分がありますから政府の判断も待つんですけれども、この委員会の質疑の模様は北朝鮮も当然注目しているでしょうから、北朝鮮がいつまでも不誠実な態度を続けるのなら、やはり圧力を背景にした対話でなければ結果は得られない、何もしなければ、結果的には、向こうからは絶対に持ちかけてこないわけですから、こちらからアクションを起こす、私たちは、そのことを、追加制裁という形でぜひ積極的に検討していただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 
△笠井亮議員(共産党)


 ----一部に、さきの六カ国協議の結果や日朝協議の現状をもって、北朝鮮に対する圧力強化を求める動きもあります。私は、しかし大事なことは、さきの首脳会議の行動計画でも示された方向でやはり努力することだと思うんです。そこで、伺いたいのは、今各国が努力している基礎にあるのは、二〇〇五年九月の六カ国協議、六者会合での共同声明であり、その目標を達成する方法としての行動対行動の原則であります。すなわち、一方が前向きの行動をとれば他方も前向きの行動でこたえる、すべての諸懸案の同時解決を目指すのではなくて、一致した問題から段階的に解決を図っていく、そうした方法で問題の包括的な解決を図り、北東アジア地域の永続的な平和の枠組みをつくり上げる。この立場で努力することが関係国に強く求められていることだと私は考えるんですけれども、中曽根大臣、河村官房長官のお考えはいかがでしょうか、伺いたいと思います。それぞれお願いします。

 中曽根外相:今委員がお話しになりました二〇〇五年九月の六者会合の共同声明、これでは、これもお話ありましたけれども、行動対行動、約束対約束の原則に従って、段階的に措置を実施していくということが合意をされているわけでございます。これを受けまして、六者会合では、これまでも、初期段階の措置と、それから第二段階の措置、これが合意をされまして、六者会合共同声明の完全実施に向けて段階的に措置が実施されてきたところでございます。 しかし、残念ながら、今般の六者会合首席代表者会合におきまして検証の具体的な枠組みに関して合意が得られませんでしたけれども、懸案の検証の具体的枠組みについて六者間で文書による合意が形成されることによって六者会合プロセスが再び軌道に乗ることを期待しておりまして、これが実現するよう、米国を初めとする関係国と緊密に連携をして努力していく考えでございます。

 河村官房長官:行動対行動、そして、同時行動といいますか、その原則は大事だと思っておりますし、このことは、北朝鮮に対しても、調査委員会を立ち上げて全面的な調査を開始するならば日本側も行動する、人的往来の規制解除、航空チャーター便の規制解除もやるということを確認し合っておるわけでございますから、残念ながらそれができていないということ、これからもその点については強く求めていかなきゃならぬ、こう思っております。