「合同調査に着いては慎重に検討」
衆議院拉致問題特別委員会(2008年6月19日)
政府答弁者は町村信考官房長官、山本明彦内閣副大臣、小野寺五典外務副大臣、河内隆内閣府大臣官房拉致被害者支援担当室長、池田克彦警察庁警備局長、斎木昭隆外務省アジア太平洋州局長。
「特定失踪者を準認定せよ」
△高木毅議員(自民党)
――今回この交渉で、北朝鮮側は、これまでずっと言い続けておりました拉致問題は解決済みという従来の立場を変更したと私は理解しておりますが、それでよろしいでしょうか?
齋木局長:最終的には、長い議論の末でございますけれども、先方は、私の方から要求したことを受けて、拉致問題が解決済みであるというこれまでの立場、これを変更するということについて同意する、そういう最終的な答弁をいたしたわけでございます。
――その一部解除の時期、タイミングについて、私は、再調査の具体的な進展が見えない限り解除すべきではない、これまでの北朝鮮の種々の対応を見ているとそう思わざるを得ないわけでございますが、現在の政府の認識というものを問いたいと存じます。
町村官房長官:これは、再調査をどういうふうにまずやるのかということで、今後、北朝鮮と、再調査の具体のあり方につきましては引き続き協議をしていかなければならないわけでございますが、再調査そのものはやはり実効的なものでなければならない、そういうことで北朝鮮と調整をしていこう、こう思っております。 一方、再調査が行われて具体的な結果が得られるまでには、多分一定の時間がかかるということはあり得るのかなと思います。そういう予想のもとで、また我が方としてはしっかりとした調査が実施されることを当然ながら要求し、期待をするわけであります。したがって、再調査の結果、最終的な結果が出るまで何も日本側は措置をとらないということではないと思います。先方が再調査のその具体の行動をとってきたときに、私どももその行動を見ながら、それに見合う、行動対行動という原則で、日本側の措置について、必要な政府の部内での調整、あるいは日朝間の調整を行いながらとっていこう、こう思っております。
――私は、ぜひ日朝共同調査というものをするべきだと考えております。これについてはいかがかということが一点。そしてもう一点、もしその共同調査というものができないとするならば、私は、たとえ何人かが帰ってくる、奪還できたとしても、その再調査の信憑性というものをしっかり見なければならないと思っておりまして、その信憑性というものを担保、確保するということが必要かと思いますが、何をもってそうしたことをするのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
小野寺外務副大臣:共同調査のことですが、この調査ごうにつきましては、再調査の具体的様態については北朝鮮側に一任するのではなくて、我が方としても、これが生存者を発見し、帰国させるための調査として実効的なものになるように北朝鮮側と調整を進めていく一方、共同調査といった形とすることが適切なのかどうか、慎重に検討することが必要だと考えております。
――共同調査が適正かどうかというお言葉でございましたので、この時点で共同調査を全く排除するものではないということかと思いますので、それでよろしいですか。
小野寺副大臣:そのことも踏まえて適切に検討していくということであります。
――よど号犯人の帰国の意義というものに少し言及をしたいというふうに思っています。よど号犯の帰国は拉致の進展とは関係がないとする従来からの政府の認識、今でも変わっておりませんか?
町村官房長官:今回の協議で、北朝鮮側から、よど号関係者の問題の解決のための協力をする用意というものが表明され、被疑者としての引き渡しを行うため、北朝鮮の国内法との関係を考える必要があるといった発言もあったようでございます。したがって、日本としましては、今回北朝鮮側が表明をしました、問題解決への協力と言っているわけでありますが、それは、我が方が要求している被疑者としての引き渡しに向けた協力であるというふうに理解をしております。今委員お尋ねの、よど号犯の帰国というものは拉致問題の進展とは関係がありやなしやというお問い合わせでございますが、これは従前お答えしているとおりでありまして、必ずしも直接関係するものではないということ、これは何ら変わるところはございませんただ、よど号の関係者の中には、拉致被疑者として逮捕状が出されている、これらの者が、もし帰国が実現をすれば、拉致に関する有益な情報というものが得られる可能性がある。そういう意味で、拉致問題の全容の解明に向けた一定の意味はあるということは言えるのではなかろうかとは思います。
----一つ、特定失踪者について、あるいはまた特定失踪者と今回の北朝鮮の再調査についてお尋ねをするわけでございます。今、また政府の方では、警察庁を中心に再捜査を行っております。改めてこのことについての政府の認識というものを問いたいと思います。
河内室長:いわゆる特定失踪者の事案も含めまして、関係省庁の緊密な連携のもと、全力を挙げて国内外からの情報収集や関連する調査、捜査を進めているところでございます。拉致行為の存在を確認するに至らなくても拉致の疑いが極めて高い方々を準認定するという御提案についてでございますが、そもそも認定は、北朝鮮当局によって拉致行為が行われたか否かを判断基準としているわけですが、それとは別に、政府として拉致行為を確認できないまま準認定というカテゴリーをつくったとしても、拉致の疑いというのは程度の問題でございますので、その範囲を客観的かつ一義的に確定することは困難なところがございます。また、仮に拉致行為の有無を確認できないまま準認定を行い、万一、被準認定者が拉致被害者でないことが明らかになってしまったような場合には、準認定はもとより本来の認定制度自体についてまで北朝鮮側に反論する材料を与えるなど、拉致問題の解決自体にも否定的な影響を及ぼす可能性も懸念されるところでございます。
――日本側も北朝鮮側に情報を提供して、そして調査をさせるということをしていただきたいということ。二〇〇四年十一月だったかと思いますが、我が方は、日朝協議で五名の氏名を示しているというふうに思います。そのときには北朝鮮側は回答はなかったわけでありますが、ぜひこういった方々についての再調査ということも含めて対応をするように働きかけていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
齋木局長:今回の実務者協議の場におきまして、もちろん拉致の被害者の件を中心に先方との間でいろいろとやりとりをいたしましたけれども、私の方からは、いわゆる特定失踪者の方々、特に、その中でもいわゆる一千番台リストというカテゴリーに載っておられる方々、これは拉致の可能性が高いと言われている方々ですけれども、こういった方々も含めて、いるんだということは、一応リストを提示いたしまして、ぜひ関連情報を提供してもらいたいということを要求したところでございます。先方は、私がそういうふうに要求したことについては一応受けとめていたというのが私の認識でございます。
――私は、万景峰号というのはまさに象徴でありますので、ぜひ入れていただきたくないというふうに思っております。これ一点だけお願いします。万が一、捜査の進展なき場合ということであります。もし、再調査をしなかったり、あるいはまた進展が見えなかったときとか、あるいは調査をしたが何もなかったという結論が出てきたら、制裁の一部解除をしないというのは当然でありますけれども、さらに制裁を強化すべきだと考えております。
町村官房長:調査が全く始まる前から、芳しからざる結果が出た場合どうするかということを想定してお答えするのは、少なくとも現状、不適切だろうと思います。しっかりとした答えが出るような再調査にさせるように最大限努力をしていきたいと思います。
△江田康幸議員(公明党)
――既に再調査は過去に前例があります。小泉元総理が二回目の訪朝をしたときに、金正日国防委員長は、今までのことを白紙にして再調査をすることを約束いたしました。その後、北朝鮮から提出された横田めぐみさんの遺骨は、DNA鑑定の結果別人のものであることが判明して、ほかに提出された調査結果につきましても書類の不備が見られたわけでございます。そこで、前回の再調査と今回の再調査というのはどこが違うのか、また再調査の中身についての政府の見解をまずはお伺いしたいと思います。
齋木局長:我々としては、北朝鮮側が日朝関係を本当に前に進める気があるのかどうかということを見るときに、今度行うことになっている調査というものが本当にきちんとした内容の調査になるのかどうかということをよくよく見きわめて判断したいと思っております。もちろん、その調査を行うに当たって、日本側として全く一方的に北朝鮮の調査に任せっきりということでなくて、日本としてこういう点についてしっかりと調べてもらいたいということもあわせて先方に対して注文をつけていく、そういう考えでいるわけでございます。
――この再調査は北朝鮮側が主導で行うと伝えております。調査結果が真実かどうか検証できる仕組みをつくることが重要かと思います。やはり、日本側が何らかの形で実質的に関与するか、または、国連の人権委員会など第三者が入ったこういう合同委員会等を設置して、客観的、合理的に進めないとこれは前の轍を踏むのではないか、そういう気がいたします。そうした見通しを持っていらっしゃるのかどうか、政府にお聞きします。
齋木局長:我々は、今度やり直すことになっているその調査の進め方について、これを全部北朝鮮任せにすることなく、調査の結果が日本にとって受け入れられるものであるべきこと、そしてまた、やはり国際社会の目から見ても、北朝鮮が行った調査について、真摯に取り組んだその結果であるということがわかるような、そういう調査にすべきであるということを我々としては考えております。
――制裁の一部解除ということについて確認をさせていただきますが、これらの制裁の解除項目はどのような理由で選ばれたのか、また、人道的支援からの万景峰号等の入港許可というのは国会承認を必要とするのかどうか、まずはそこについてお聞かせください。
小野寺副大臣:人的往来の規制解除や航空チャーター便の規制解除を表明すると同時に、民間の人道物資輸送のために北朝鮮籍船舶を我が国の港に入港させたいとの希望が表明される場合には、人道支援物資の積み込みに限り認めるということにいたしました。これは、北朝鮮からの輸入禁止措置や北朝鮮船舶の一般的な入港禁止措置など、我が国の対北朝鮮措置の中核となるような措置については引き続き維持をする必要があるとの考えから、それ以外の措置について解除を表明したということであります。
「朝鮮総連は民間団体か」
原口一博議員(民主党)
――官房長官中心に少しお話を伺いたいと思いますが、まず第一点。今回、日朝交渉で日本側も下記の措置をとることを表明。三つですね。この三つ、特に船舶の入港、私たちは超党派で、特定船舶の入港禁止、これを立法させていただいています。これは国会承認なしには解除できないという認識を持っていますが、この三つの行動は国会承認なしにできるというふうに認識をされているのか、まず伺いたいと思います。
齋木局長:三つの措置のうち、まず人の移動についてでございますけれども、これの規制の解除につきましては、これは四月十三日に官房長官が制裁の延長を発表いたしましたときの経緯もございますけれども、恐らく、人の移動に係る話は、日本の政府の中では法務省の入国管理局の方から通達という形式でそういう規制の解除を表明する、そういう必要性が出てくると思っております。それから、航空チャーター便、これにつきましては国土交通省の方で所管しておられます。今検討中であると思いますけれども、恐らく閣議との関係等、今整理していると思います。船舶の話につきましては、法律ございますけれども、これに基づく閣議決定それからその告示が必要になってくる。国会の承認は恐らく必要ないのではないかという理解でございます。
――なぜ国会承認が要らないのか。これは人道支援と認定すれば閣議決定で済むというふうに考えているんじゃないですか。その人道支援というのは一体何ですか。ここにある、「民間の人道支援物資輸送のために北朝鮮籍船舶を我が国の港に入港させたいとの希望が表明される場合には、」と。北朝鮮がこれは人道支援だと言ったら万景峰号も入れるんですか。人道支援の中には何が入っていますか。では、朝鮮総連はここに言う民間ですか。教えてください
齋木局長:人道支援のための物資、これの輸送を行うために、北朝鮮の国籍というか北朝鮮籍船の入港を認めてもらいたいという要請があれば、恐らく、そういうことで申請を出してもらわなきゃいけませんけれども、その申請が出た段階で、本当にそれが人道支援目的のための物資の搬送であるかどうかについて日本政府としては判断をする、その意味では、真にその目的を達成するための手段としてこういう申請が出てきているかどうかということをきちんと個別のケースごとに判断する、そういうことでございます。朝鮮総連という団体につきましては、総連側は、朝鮮の公民を代表する団体だ、たしかそういう認識を内外に表明していると思います。朝鮮総連という団体の性格については、これはまさに、今後、人道支援物資を搬送するに際して仮に朝鮮総連がそういう申請を出してくる場合には、個別のケースに応じてよくよく判断したいと思っております。
――朝鮮総連がどうして民間ですか。答弁、納得いきません。朝鮮総連は民間ですか。その人たちが申請したときに民間かどうか判断するんですか。教えてください。
町村官房長:彼らがみずから、公の性格を持っているということを言っているわけですね。私どもは、それを一度として認めたことは実はないんです。ないんです。もし、この人たちが民間の団体でないということを言えと原口委員がおっしゃるならば、彼らに公的な性格を認めることになるんですね。それは私は、ちょっとおかしいことになりますから、朝鮮総連が民間団体であるかどうかというのは、具体に申請が出た段階で考えると今局長が申し上げましたが、十二分に、慎重の上にも慎重にそこは考えていきたいということであります。
――私は、朝鮮総連を公的機関に認めろなんて一言も言っていませんし、そんな考えは持っていません。持っていません。彼らが民間だと言って、そしてここに言う民間団体の支援物資の申請をすること自体が認められませんねということを言っているんです。
町村官房長:今委員の言うとおりに、彼らが民間団体でないということを政府は言え、あなた今こう言っているんでしょう。そうなると、彼らの、まさに朝鮮総連の言っている公的性格を日本政府が認めたということになるじゃありませんか。それはおかしいんじゃないですかということを言っているんです。
――支援を求める対象ではないでしょう、ここに書いてある民間団体というのは朝鮮総連は入らないんでしょうということを言っているだけですよ。それを確認しているだけですから。何もおかしなことを言っているわけじゃないじゃないですか。政府を支援しようと思って言っているんですよ。破綻した北朝鮮系の信用組合、朝銀ですね、ここに今までどれだけのお金が入り、そして、平成九年からこれは回収をしているはずですけれども、どれぐらい返ってきましたか?
山本副大臣:金銭贈与といたしましては一兆一千四百四十四億円しておりまして、不良債権等の資産買い取りとして二千九億円しております。回収がどうかといいますと、今までの回収累計が二千百五十五億円となっております。
――この額というのは恐るべき額ですよ。総資産額が同じような銀行に対して、例えば、長銀は総資産額が総連の約十倍ありました、日債銀も約六倍ありました。そこに入った公的資金に対して、この金銭贈与というのは、割合からするとべらぼうなものです。しかも、債権回収も進んでいない。いつまでに回収するんですか。
山本明彦副大臣:回収につきましては、目標年度、目標額というものは、性格上、それぞれ、景気状況によっても違いますし不動産等の状況も違いますので、いつまでにという目標の設定はしていないところであります。
----一兆三千億ものお金を入れて、そして二千億ちょっとが回収をされて、そして回収の期限も切っていない。これは税金ですからね。北朝鮮は拉致問題は解決済みだという姿勢を変えたと言っていますけれども、具体的にどのような言及があったのか。拉致問題は解決済みですという姿勢を変えますという具体的な言及があったんですか。それとも、変えるんだなということで、はい、そうですというふうに言ったんですか。具体的に教えてください。
齋木局長:私の方からは、日朝関係を前に進めるということをもし北朝鮮側が本気で真剣に考えているのであれば、その前提として、日本にとって最大の懸案であるところの拉致問題、これについてもきちんと最終的な解決を図ってもらわなきゃいかぬ、そのためにいま一度北朝鮮として決断をし、具体的な行動という形で真摯なところを示してもらうべきだということをまず言いまして、その点については全く異論がないということでございました。それではということで、私の方から、では、拉致問題は解決済みであるというあなたたちの従来からの主張、これは変更する、変更したということで私は認識するけれどもそれでよろしいかということを私が重ねて尋ねましたのに対して、そういう認識である、こういうことでございました。
――調査に取りかかるだけで万景峰号は入れないという約束をしていただけますか。政府は、よど号犯人の帰国について、これは制裁緩和とは全く無関係の話である、これは先ほど高木委員も質問されましたけれども、この認識を明確に答弁いただきたいと思うんです。
町村官房長:後者のことは、先ほどお二方の委員にもお話ししたとおりでございまして、よど号の犯人の問題は制裁とは直接関係のない話ということであります。ただ、被疑者の中には拉致問題に関連する人もいるということで、一定の情報収集等が可能になるといったような効果はあるかもしれないということは言えようかと思います。一番目の問題で、再調査を約束しただけで制裁を一部緩和するのはおかしいという御意見でありますが、この場でも先ほど申し上げましたけれども、再調査をするという言葉に対して、私どもは、今言葉として、制裁を一部緩和することはあり得ると言いました。しかし、今度は行動対行動ということに移ります。再調査の開始、実質的なその再調査の実施、そしてその結果、そうした彼らの行動を見ながら、私どもも、制裁という行動をどのような形でこの三つの分野に限って緩和していくのかというのを決めようと。言葉対言葉の次元です、きょうの時点は。今後は行動対行動という形で、日本政府としてどのような行動をとっていくのかというのは、先方のまさに具体的な行動にかかっているということであります。
――往来についても、非常に危惧を持っているのは、政府と異なるスタンスで、いわゆる二元外交とあえて言葉を使わせていただきますが、北朝鮮側との交渉を行おうという動きがあるやに聞いています。政府より甘いことを国会が言うのであれば、政府も交渉しようがないと思います。私は、そういう動きについては厳に慎むべきであるというふうに考えます。また、北朝鮮により横田めぐみさんの遺骨として提供されたもの、これには横田めぐみさんのDNAは入っていなかった、にせの遺骨であったという認識を再度確認しておきたいと思いますが、これは警察庁で結構です。
池田克彦警備局長:横田めぐみさんの遺骨であるとして提供されたものにつきましては、その中から、DNA鑑定の専門家が、DNAを検出できる可能性のある骨片十個を選定いたしまして、それを五個ずつ、帝京大学そして科学警察研究所といった国内の最高水準の研究機関に鑑定嘱託したものでございます。その後、帝京大学から、横田めぐみさんの遺骨とされる骨片五つのうち、四個から同一のDNA、また他の一個からは別のDNAが検出されておりますが、いずれのDNAも横田めぐみさんのDNAとは異なっているという鑑定結果を得ております。また、横田めぐみさんのDNAと同一のDNAは検出されていないというふうに承知しております。
――もうこれで質問を終わりますが、あちらの方が苦しいんですよ。シルクワームを発射しました。そのシルクワームというのはトップの了解がなくて発射されたのではないか。今、制裁がきいていて、そして平壌の中の、彼の周りだけでも食べさせることができない、そういう状況の中で私たちは交渉をしているということをもう一回認識すべきだというふうに思います。この拉致問題の解決に与党も野党もありません。そういう立場で私たちも努力を重ねていきたいということを表明して、質問を終えたいと思います。
町村官房長:口委員に一点だけちょっと、さっき私が申し上げたことでもし誤解があるといけませんので。 何も私は、朝鮮総連を民間団体と認め、どうぞどうぞいらっしゃいと言っていることを言いたかったんじゃないのであります。逆の意味で、私は、もし彼らが純粋に民間団体であるというのならば、そのことをちゃんと彼らが立証しなければ、あるいは我が方がちゃんと調べて、なるほど、あなた方は公的性格のない団体なんだなと、彼らが言う、あるいは我々が調べてそういう結論に達しなければ、朝鮮総連が申請してきてもそれは認めないということを申し上げたくて、慎重の上にも慎重にということを申し上げたつもりでございますので、念のために申し添えさせていただきます。
「偽遺骨を出してきた宋日昊大使は信頼できる相手か」
△松原仁議員(民主党)
――日朝協議は日本外交の敗北であるというふうに私は思っております。齋木局長、私は、齋木局長の今まで拉致に対する熱意、踏ん張り、非常に高く評価をしております。しかし、今回はちょっと厳しいことを申し上げざるを得ないというふうに思っているわけであります。今回の相手側の担当者宋日昊さん、私も会ったことがありますが、彼を齋木さんは信頼できると思いましたか。
齋木局長:私は、宋日昊大使とは何度もこれまで交渉の場で相対峙してきております。そういう意味において、お互いに外交官同士としてのつき合いをしてきておりますが、信頼できるか、信用できるかということというのは全く別の話だと思います。
――彼は、今議論があった横田めぐみさんのにせ遺骨の問題であるとか、また死亡診断書のにせものの問題であるとか、ああいったものを出してきたときの担当者の一人でもあります。つまり、北朝鮮の国益のために平然と今までまがいものを出すことにためらいを持たなかったのが宋日昊という人物であるということを、我々はこの委員会で明快にしておく必要があると思っております。私は、超党派の拉致議連のメンバーとして、テロ支援国家指定を解除するなということで、アメリカの議員や関係者、議会関係者、ヒル氏を含めて議論してまいりましたが、今回ヒルさんが来ているこの間に、少なくとも、このタイミングでライスさんがテロ支援国家指定解除に言及したことに対して、日本政府としては、その方向に関して我々は遺憾であるということをおっしゃるつもりがあるかどうか、町村さん答えてください。
町村官房長:日本外交の敗北であるという非常に断定的な御発言をしておられますが、私は、必ずしもその点においてあなたと意見を同じくするつもりはございません。アメリカの圧力で北が応じてきたではないか、それはアメリカであれ、中国であれ、ロシアであれ、韓国であれ、この拉致問題について北朝鮮がきちんとした対応をするように働きかけてくれと日本からも頼んでおりますし、彼らも自主的な判断としてやっているわけでありますから、アメリカの圧力というか説得というか、それが北に対してあったからといって、それがなぜ日本外交の敗北という結論の論拠に導かれるのか、私にはわかりません。
――再調査の中身が、いわゆる生存者が帰国できるような再調査と言っているけれども、はっきり言わせてもらえば、言葉の遊びにすぎない。先ほど公明党の先生から話があったように、金正日さんが再調査を約束して出てきたのがにせの遺骨、にせの死亡診断書。言葉のあやですよ、再調査。大体、私が言うまでもなく、あの国家において調査しようと思えば一瞬で調査できるはずですよ。私は、そういった意味でなぜ今回の再調査が、生存者が帰国できる再調査というのは具体的なイメージはあるんですか。齋木さん、お伺いしたい。
齋木局長:今までとは違うやり方で調査をしてもらいたい、そしてその調査が生存者の方々の帰国につながるようなものでなきゃいけない、あなたたちに一方的にこの調査のやり方をお任せするということは考えていない、ぜひ具体的に、日本側が納得するような、満足するような、そういう調査をしてもらいたいと思っている、それについては我々としても申し上げることは申し上げる、こういう趣旨のことを私は伝えました。
――この人的往来の解禁というのは、これは北朝鮮側からの要求があったのか、要求があってこれを入れたのかどうか、お伺いしたい。
齋木局長:まことに恐縮ですけれども、私は、外交交渉の中身にかかわる話でございますので、この場で御答弁するのは差し控えたいと思います。
――いやしくも、日本の政治家から、私が北朝鮮に行きたいからこういった人的往来を解除してほしい、そういった話はなかったんですか。それは答えられるのかな、どうだろう。
齋木局長:お話しになられたことが具体的に何を指しているか、私には見当がつきかねますが、そのような形での話は外部からは一切ございません。
△末松義規議員(民主党)
――五月の二十七日ですか、毎日新聞なんかが書いていますけれども、拉致被害者の数人が生存している、帰国の用意があると北朝鮮がアメリカに伝達した、こういう報道がなされました。それからしばらくして制裁解除とかこういうふうな話が出てきた。ひょっとして北朝鮮の方は、拉致被害者が数人いて、それをアメリカに対して、実はいるから今度日本に返すんだというようなことを言ったのかなというような憶測ができるんですけれども、そこは、アメリカからそういった情報はありましたか、官房長官、まず聞いておきます。
町村官房長:私は官房長官記者会見ですべて全否定をいたしております。また、アメリカからもそういう連絡はありません。報道があったちょうどそのころに、たしか齋木局長とヒルさんが会っておられたものですから、そのことを確認してもらったんですが、それは一切、ヒルさんの方からも、そういう連絡をしたことはもとよりない、こういう明確な否定の発言がありました。
――齋木局長はいかがですか。今回の交渉のときに、そういったような情報というのはありましたか?
齋木局長:今回の北朝鮮側との実務者協議の場において、そのような話は一切ございません。
――北朝鮮だけの調査であれば日本国民としても信頼できないというのが経験上わかったということであったら、日本の警察あるいは国際機関、こういったものの合同調査できちんとやるということが日本側の受け入れられるべき調査のイメージに入っているのか入っていないのか、お答えください。
齋木局長:今後どういう形で、先方、北朝鮮側がその調査のやり直しをしていくのかということについては、恐らくこれは今北朝鮮側でもいろいろと考えをめぐらせているんだろうと思いますけれども、我々は、少なくともこの点については、日朝間で、なるべく早いタイミングで我々の注文を向こうに対して出す、そういうような形での折衝というのをやはりやらなきゃいけないと思っております。合同調査、合同捜査というお考えについて委員は言及なさいましたけれども、そういう形での調査のやり方が果たしていいのかどうかということにつきましては、これは日本政府の中でもよく慎重に検討していく必要があろうかと思っております。
――ちょっとくどいようですけれども、では、北朝鮮が自分たちできっちりやったということで、再調査をしましたということだけでは納得できないということですね。
齋木局長:いかなる方法でこの調査のやり直しをするのかということについて、我々は、彼らが調査を始める前に彼らとの間でその考え方をただし、またこちらからの考え方を向こうに伝えるということを今考えているわけでございます。
――ではそのときに、調査内容が固まった時点でそれは世間に公表されるということですね。
町村官房長:どういう調査の方法がいいのか、よく考え検討をし、そして、その過程でもちろん先方とのやりとりもあると思います。その上で、固まった段階で、これを世の中の人に、皆さん方に公表するかどうか。どこまで公表するかは別にして、こういう方法でやりますということは、概略申し上げるのは、私はそれは当然のことかなと思います。
△笠井亮議員(共産党)
――今後、再調査をめぐる具体的対応等でそれをどうやって生かしていくというおつもりなのか。交渉の当事者として伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか?
齋木局長:どういうやり方で今度調査を進めていくのかということについて、これは今までとは違うやり方をぜひやるべきだということを私は申し入れましたけれども、北朝鮮側においても、国内に持ち帰って、どういう方法でやるのかということについて恐らく今検討していると思いますが、実際にその調査をもう一度、実施に踏み出す前に、我々の方からも、日本側としてはこういう点についてもきちっとやるべきであるということも含めて、いろいろと考え方を先方に対して伝える、そのための折衝の機会を持たねばならないと思っております。