2010年6月29日(火)
最後の砦の日本、惨敗の北朝鮮
今日は、日本とパラグアイ戦。アジア最後の砦の日本が敗れれば、その瞬間、W杯への関心は一気に薄れてしまう。
岡田監督は「アジアのプライドを持ってやる」と決意を語っていた。しびれる言葉だ。アジアの期待を背負ったこの大一番に勝って、準々決勝に進出してもらいたい。頑張れ、日本!
一次リーグでいち早く脱落した北朝鮮選手団が帰国したとの報道はまだない。まだ、南アフリカに滞在しているのだろうか?
初の生中継の試合だったポルトガル戦で大敗したことで、帰国すれば、ペナルティが科せられるのではとの噂が駆け巡っているが、北朝鮮は驚いたことに全くいいところもなく0−3と完敗した最終戦のコートジボワール戦も翌日、録画中継して、国民に見せていた。北朝鮮も随分と変わったものだ。
ぼろ負けしたポルトガル戦を途中で打ち切らず、また録画中継とはいえ完敗したコートジボワール戦まで放送したところをみると、北朝鮮も忍耐強くなったというか、成熟したといえる。外の世界を、世界のレベルを知るには、負け試合を見せることも大事だ。でないと、いつまで経っても強くならないし、成長もしない。
日本や韓国、米国では北朝鮮選手らが一勝もできなかったことから帰国後、「収容所に送られる」とか「炭鉱送りされる」との報道がある一方で、中国では逆に英雄扱いされ、ご褒美として高級住宅や高級車があてがわれるとの報道もある。天国か、地獄かの両極端な報道だ。
結論から言うと、両方ともないだろう。仮に、怒り心頭のあまり懲罰を考えているならば、なにもわざわざ結果がわかっているコートジボワール戦をテレビで放送しなかっただろう。また、負けたからといって厳罰に処すれば、サッカー選手になりたがる者は一人もいなくなってしまう。但し、監督だけは、なんらかの責任は取らなければならないだろう。でないと、示しがつかない。
過去のケースだと、幹部や責任ある立場の者が失敗した場合、あるいは過ちを犯した場合「思想や忠誠心に問題がある」として「人民大衆から学べ」「労働者から学べ」を合言葉に精神修行、思想鍛錬の一環として重労働を科せられる炭鉱に送られたこともあった。この制度が今なお現存しているならば、キム・ジョンフン監督の場合に限って、もしかしたら、あり得るかもしれない。
では、この他の選手らは本当に帰国後に英雄待遇を受けるのだろうかと、問われれば、これも思わず唸ってしまう。アジア予選でW杯出場を決めた段階で、選手らはすでに「人民体育人」あるいは「功勲体育人」の称号を手にしている。これにより生涯年金も保障される。これだけで十分だ。
仮に、日韓同様に一次リーグを突破し、ベスト16入りしたなら、話は別だが、一次リーグで敗退したわけだから、それ以上でも、以下でもない。
英雄扱いされるかは、南アフリカからの帰国報道があるかどうか、W杯進出を決め、サウジから帰国した時と同様に空港で熱烈歓迎され、平壌市内の凱旋門で群集に囲まれるかどうかでわかる。
北朝鮮国内での評価は別にして、44年ぶりの出場は北朝鮮にとって大きな宣伝価値となったのは紛れもない事実だ。
ブラジル、ポルトガル、コートジボワールなど強豪と同じ死の組に入ったことで、一次リーグの突破どころから、1勝も、あるいは1分もできず、3連敗に終わるだろうと初めから予想されていた。従って、予想とおりの結果に終わったわけだから、期待が裏切られたというわけではない。むしろ、ブラジル戦での善戦で、一躍株を上げたことになる。
もう一つは、W杯の本戦に出場したことで、自動的に2千万ドルをゲットしたことだ。北朝鮮にとっては貴重な外獲得となった。
今大会ではイタリアのスポーツ品メーカー、ゲジア(LEGIA)が北朝鮮代表にユニホームなどスポーツ用品を提供していた。北朝鮮はレジア社と490万ドルで4年契約を交わしている。これまた、大きな収入だ。
同社の広報責任者は昨日、「大いに宣伝になった」と、北朝鮮の奮闘を高く評価している。ブラジル戦での善戦で、欧州、米国、カナダ、中南米、さらには中国やインドなど世界中から注文が殺到しているようだ
「北朝鮮は一勝もできなかったが、我々は失望していない。むしろ誇りに思っている」とのこの広報責任者の言葉を北朝鮮当局にも共有してもらいたいものだ。